クレジットカードの入会審査と国内外のスコアリングシステム比較

入会審査とスコアリングシステム

クレジットカード会社が入会申込みを受けた場合、通常は同社と申込者とはまったく面識がありません。将来この人が優良会員になるか、あるいは多重債務者になるか、申込み時点では何もわかりません。カード業界の入会審査は無形の「個人信用」を対象として行われます。

一見つかみどころのない個人信用は、どのようにして調べられるのでしょうか?

新規入会申込者の潜在リスク

一昔前まで、審査の方法は主として面談によって決定していたのですが、現在は電子的審査方式に移行しています。審査担当者の主観的判断から、大数の法則など学理に基づく客観的判定方式へと高品質化されています。

この方式で大きくクローズアップしていきたいのがスコアリングシステムというものだ。

入会審査とは?

2003年1月に「金融機関による顧客の本人確認法」が施行される。カード入会希望者は、公的書類(運転免許証、保険証、パスポート等)によって、自分の氏名・生年月日・住所等を証明しなければなりません。それでは、現在は入会審査はどのようにして行われているのでしょうか。

入会審査は、カード業界では最も重要な業務の1つといわれています。審査には、この入会審査のほかに途上審査があり、会員のカード利用状況や返済状況などを調べて(ビヘイビア追跡調査とクレジットヒストリーの蓄積)、クレジット枠の見直しを行います。ここでは、入会審査に的を絞って話を進めていきます。

入会審査とは、過去の顧客データを観察することから得られる経験則に照らして、カード申込者の個人信用を判断し、返済意思・返済能力の有無を客観的かつ公正に決定することをいいます。日本では、申込者のうち、20%が優良顧客層、20%が何らかの形で信用調査を必要とする層、60%が要注意層といわれています。

入会審査の基礎となるのは、申込書の記入項目のみです。申込者が過去に他のカード会社と取引がある場合、同社が所属する個人信用情報機関にデータが登録されているので、これを参考にします。ただし、その利用は、原則として、この個人信用情報機関が自社と同一業態に属する場合に限られます。

申込書から得られる判断基準項目数はカード会社によって若干違いはありますが、おおむね30項目前後です(アメリカは平均で約50項目)。一昔前までは、審査担当者は自らの経験と勘により、3つのC、すなわち人格(character)、能力(capacity)、担保(collateral)に重点を置いて、個人信用を判断していました。

しかし、現在は、この経験と勘による手法に代わって、定性分析および定量分析といった手法が主流となっています。定性分析には、申込者の人柄、人相、態度、表情、言葉遣い、服装、健康状態、申込書の文字、保険証の汚れ具合、住所と申込み店舗との距離などが使われます。この分野はいまだにベテラン審査員の「第六感」がよく働くといわれています。

一方、定量分析は、定性分析と異なり、申込者の支払能力を計数的に把握する方法で、定性分析よりも客観性があります。収入、可処分所得、貯蓄、職業、勤続年数、住宅状況、負債の状況などを数値化するやり方です。

ただし、これらのデータはあくまでも入会申込書において正しく申告されたものでなければならなりません。ある専門家によると、他社借入れ状況については、多重債務者の申込書の場合、ほとんどが過少申告か虚偽申告であるといいます。これを最初の段階でどうやって見破るのかが、審査担当者の腕の見せ所です。

審査のテクニック

審査技法は、時の流れと共に変化しています。しかし、新しい手法が従来のやり方をすべて変えてしまうことは決してしません。有効な手法は踏襲されて、あるいはさらに磨きをかけられて、新しい手法と共に用いられているのが実情です。

たとえば、面談方式による与信審査においては、担当者の経験と第六感が大いにものをいいます。これに大きいウエイトを置く会社もあります。

しかし、このやり方では大量処理には限界があります。経験に基づく与信は、審査担当者の養成が急増する入会申込者に追いつきません。また、面談方式は客観性に乏しく、与信不可の理由に一貫性を欠くケースも出やすい。差別に敏感なアメリカで、この「名人芸」が問題となったことも頷けます。

そこで登場してきたのが次に述べる「机上立体調査方式」です。この方式は、申込書の提出から最終段階の承認・拒否まで、次のとおり5つのステップに分かれています。

  1. 申込書の提出
  2. 申込書の記入事項をパソコンに入力
  3. 個人信用情報機関や社内情報等のデータをチェック
  4. 申込書の記入事項を精査
  5. 電話、現地訪間等による確認
  6. 承認・拒否

この方式をさらに自動化するために登場してきたのが、保険数理や統計学に裏打ちされた、コンピュータによるスコアリングシステムです。

カード会社は、このシステムをトップシークレット扱いにしており、外部からその内容を窺い知る術はありません。ですが、各社とも、次のいずれかの方式でシステムを構築していると言われています。

  • 海外の専門会社からスコアリングテーブルを購入する(既製品)
  • 外部のコンサルタントの助言を得て、自社に適したテーブルを作成する(イージーオーダー)
  • 自前で精度の高いシステムを作り上げる(オーダーメイド

ただし、この最新方式によっても、機械的かつ自動的に審査できるのは全体の約80%で、残りの20%は審査担当者の第六感による、といわれています。

スコアリングシステムとは?

まず、ここでよく使われる言葉、「母集団」「特性」「属性」「データマインニング」などの専門語を理解することから始めましょう。

母集団とは、統計の対象となる、ある特徴をもった集団(グループ)をいいます。たとえば、ゴールドカードの申込者、同窓会やある趣味などの絆で結ばれた人々です。これらのグループは、それぞれ他のグループとは異なる特徴や行動パターンを持っています。

特性とは、これらの特徴を引き出すための質問であり、属性とは、その回答、すなわちある傾向を示すデータと考えて良いでしょう。

データマインニングとは、膨大な量のデータを解析し、因果関係を導き出す手法を意味します。

ところで、さまざまな属性を組み合わせ、1つの(一定方向の)結論(これをスコアリングという)を推定したが、この見込みが実情と異なることがよくあります。この食い違いが多発すれば、このスコアリングは役に立たちません。この食い違いを少なくする方法がデータマインニングです。

スコアリングシステムは極めて難解です。私の能力では、これをすべて説明することはできないので、骨子だけでも見てみようと思います。

定義と基本的な考え方

スコアリングシステムの定義としては、次のようなものがあります。

  • 借入れ申込者の年収や職業を点数化し、その人の信用力や返済能力をランク付けするシステム(増渕正明『よくわかるクレジット&カード業界』)
  • 過去の貸倒れ発生率を属性項目別に統計学的に分析することにより、一定の項目を選び出し、これに一定の点数を与えることにより、与信の可否を判断するシステム(岩崎和雄『クレジット用語辞典』)
  • 借入れ申込者のリスク、すなわち、よい口座となるか不良口座となるかの見込み(オッズ)を統計学的にコンピュータで計測し、その数値をリスク評価の点数として示すシステム(アコム・プロジェクト・チーム訳『クレジットスコアリング入門』)

以上に共通する基本的な考え方は、次の3つに集約されます。

  • 入会申込者の将来のリスクを点数化して示すこと
  • 同一グループの場合、今日の申込者は、昨日の申込者とおおむね同じ行動パターンを示すこと
  • 今日の申込者のリスクは、過去の申込者全体の動きに照らして判断すれば大過ないこと

要するに、スコアリングシステムとは、新規入会申込者が将来、優良顧客となるか、多重債務者となるかを点数で予知する仕組だと理解すれば大きく間違えることはありません。

スコアリングシステムの歴史

スコアリングシステムは、第2次世界大戦中、H・ウエルズが手計算で開発したといわれています。1950年代に入ると、フェアアイザック社がこれに統計学的な手法を加え、スコアリングテーブルを作成しました。その後、金融業会、クレジットカード業界、小売業界などに急速に広がつていきました。このシステムがアメリカで注目されるに至った理由は、次の3つでしょう。

  • 申込み件数の急増に伴い、審査の迅速化とコスト削減が必要となったこと
  • 与信期間の長期化に伴い、途上審査を何回も行う必要が生じたこと
  • 客観性に乏しい経験と勘による審査が「差別」として問題視され、代替的手法が求められたこと

このような事情を背景にして、スコアリングシステムは世の脚光を浴びるに至りました。コンピュータの登場がこれを後押ししたのはいうまでもありません。日本のカード業界がこれに着目したのは80年代からと言われています。

スコアリングテーブル

70年代後半から80年代前半に、日本の銀行が利用したスコアリングテーブルの1つをご紹介しておきます。

給与所得者の信用調査採点表

年齢 35~49歳 30~34歳 25~29歳
65~69歳
20~24歳
70歳以上
住宅状況 持ち家 社宅・公営
アパート
借家・寮
市営アパート
間借り
勤務先 官公庁
一部上場
二部上場 地区内の
優良企業
その他

(○内の数字は、評価点を表す)
資料:岩崎和雄『クレジットとはなにか』136頁。

次に、現在アメリカなどで使われているスコアリングテーブルの一部をご紹介します。

アメリカの一般的なスコアリングテーブル(一部を示す)

年齢 18~25歳 26~31歳 32~34歳 35~51歳 52~61歳 62歳以上
住宅状況 持ち家 賃貸 その他
勤務先 引退 専門職 事務職 営業職 サービス その他

(○内の数字は、評価点を表す)
資料:前掲『クレジット・スコアリング入門』序章

たとえば、日本のスコアリングテーブルで計算すると合計55点以上、アメリカのスコアリングテーブルで計算すると合計200点以上が合格点となります。

両図は、一見すると同じように見えるが、日本の評価点は当時の銀行界の常識によるもので、科学的には説明しにくいものです。それに対し、アメリカの評価点は、大数の法則に基づく客観的な数値です。両者はアカウンタビリティ(説明責任)おいて、明らかに異なっている点も注目しておきたいところです。

スコアリングテーブルの作成

スコアリングテーブルは、次のステップを踏んで作成されます。

申込書の収集と分類整理

過去の一定期間において受け付けたすべての申込書を集め、これを一般カード、ゴールドカードなどの申込書に分類して、母集団を選定し、さらにこれらのグループを次の3つに細分します。

  1. 優良口座となった申込書
  2. 不良口座となった申込書
  3. 初めから不承認となった申込書

次に、申込書に記入された回答を調べて、誤記入や未回答項目などがあるものを除きます。では、分析のためにはどの程度の量の申込書が必要か。分析方法などにより異なりますが、経験則から見て、①と②はそれぞれ500サンプル、③は1000サンプルあれば十分といわれています。

属性項目の選定

優良口座となった申込書における特性(たとえば年齢)と属性(たとえば20~22歳)につき、全体に対する割合を算出します。不良口座となった申込書についても同じ作業を繰り返し、次の表にまとめておきます。これを「初期計数の作成」といいます。

優良口座比率 不良口座比率 優良口座になるオッズ
20~22歳 % % 例:12対1

属性項目の再編と整理

こうして作成された初期計数は、属性項目が多すぎてまとまらない、あるいは少なすぎて結論が引き出せないという結果に陥ることが多い。これを解決するためには、属性項目をある程度グループ化し直せば解消します。これを再編・整理といいます。

スコアの決定

個々の属性の評価点を決めるには、統計学上の計算方式とデータマインニングの手法が用いられます。申込みを承認するか否かを決めるスコアのボーダーラインを「カットオフ点」といいます。優良口座から生ずる利益と不良口座から発生する損失とは、トレードオフの関係にあり、経営陣が決定する事柄です。

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