
クレジットカード取引の決済の仕組みがよくわからないという人は少なくありません。そこで、今回はクレジットカードを使った決済システムの説明を、国内外で比較しながらご紹介します。
本記事の内容
決済システムの概要
カード決済は、資金決済システムの中でどのような位置にあるのか。日米で比較してみましょう。アメリカでは、
- FED WIRE(Federal ReseⅣe CommunicationSystem)
- CHIPS(Clearing House lnterbank Payments System)
- ACH(Automated Clearing House)
- BANK WIRE
- SWIFT (The Society for worldwide Interbank Financial relecomrnunication:国際間の銀行取引に係わる情報伝達を行うもので決済機能はない)
という5つのシステムがあり、カード決済は主にACHを通じて行われています。
アメリカの主要決済システム
名称 | 運営団体 | 参加者 | 主要取引内容 |
---|---|---|---|
FED WIRE | 連邦準備制度 |
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CHIPS | ニューヨーク手形交換所 |
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ACH | 全米37地区のACH協会 |
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BANK WIRE | ペイメント通信サービス公社 (PATS) |
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SWIFT | SWIFT社(ベルギーの非営利法人) |
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資料:日本銀行業務管理局(旧称)第二次機械化プロジェクトチーム報告
があり、一方、日本では、カード決済は全銀システムで処理されている。
- 日銀ネット
- 手形交換所
- 全銀システム
- 外為円決済システム
- SWIFT
日本の主要決済システム
名称 | 運営主体 | 取引内容 |
---|---|---|
日銀ネット(日銀金融ネットワークシステム) |
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コール、手形取引などのインターバンク市場取引、債券売買、銀行券受払等に関する資金決済を加盟金融機関の日銀当座預金振替え(注①)を通じ行う |
手形交換 |
|
各地の銀行協会手形、小切手等の交換、交換尻を計算し、これを日銀ネットで決済 |
全銀システム |
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企業や個人の遠隔地向け送金、給与振込、CD/ATM取引に伴う銀行間の資金貸借を集中計算し、その貸借尻を日銀ネットで決済(代行決済制度あり |
外為円決済 |
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海外市場での外為取引に伴う円資金やユーロ円取引に伴う円預金の振替えなどのための支払指図を集中計算し、その貸借尻を日銀ネットにより決済(代行決済制度あり) |
- 2001年1月4日より、「即時グロス決済」(RTGS)制度が実施された。
- 上記決済制度を補完するものとして表32に示したSWIFTがあり、わが国の大手銀行は1981年3月に加盟、日本地区センターはKDDに置かれている。
資料:『新版わが国の金融制度』日銀金融研究所、1995年
最近、急速にオンライン提携が進むCD/ATM取引も、全銀システムにより処理されている(なお、日経02・9・23「コンビニ決済広がる」の記事参照)。
決済の当事者
カード決済当事者は
- アクワイアラー
- イシュアー
- 加盟店
- カード会員
- 決済銀行
- カード取引中央処理センター(CS)
の6者間(オンアス取引やJCB、ダイナース、アメリカンエキスプレスの場合、アクワイアラー=イシュアーの関係にあるので5者間)で行われます。カード会員と加盟店間で行われるカード取引の決済は
- アクワイアラーと加盟店
- イシュアーとカード会員
- アクワイアラーとイシュアー
- アクワイアラーおよびイシュアーとCS
- Csと決済銀行との間
でそれぞれ行われます。ここでは、主として③~⑤の資金の流れに重点をおいています。
クリアリングとセトルメント
カード決済では、「クリアリング」と「セトルメント」という言葉がしばしば使われています。クリアリングとは、複数の加盟店で発生した売上伝票を仕分けし、個々のメンバーの支払いと受取り、すなわち、メンバーの勝負尻(ネットポジション)を計算するプロセスであり、いわば手形交換所のようなものです。CSがこの機能を果たしています。
一方、セトルメントとは、決済銀行に設置されているCSならびにメンバーの当座預金間の振替で、この勝負尻を決済するプロセスを指します。表34のA~D社は、いずれもアクワイアラー兼イシュアーです(オンアス取引では、複数の加盟店からデポジットされた売伝がアクワイアラー自社内で相殺されるため除外した)。
クリアリングとセトルメント図表
(単位:ドル)
売伝のデポジット | CSによる相殺 | CSに対するネットポジション | 支払バランス | |||
---|---|---|---|---|---|---|
受取 | 支払 | 受取 | 支払 | |||
A社 | B社向 25 C社向 25 D社向 50 |
100 | 125 | 25 | 0 | |
B社 | A社向 100 C社向 35 D社向 40 |
175 | 300 | 125 | 0 | |
C社 | A社向 25 B社向 200 D社向 100 |
325 | 60 | 265 | 0 | |
D社 | A社向 0 B社向 75 C社向 0 |
75 | 190 | 115 | 0 |
例:「B社向け売伝」とは、B社が発行したカードで発生した売伝をいう。
「CSに対するネットポジション」で明らかなように、CSは各メンバーとの間で資金授受を行い勝負尻を精算します(=セトルメント)。
国内における決済
次の表は国内カード取引における決済のフローを示したものです。
- 〔イシュアー〕カード発行
- 〔カード会員〕商品・サービス購入
- 〔加盟店〕売伝デポジット、売上代金回収
- 〔アクワイアラー〕売伝を自社カード分(オンアス)、国内他社カード分、海外カード分に分類し、国内他社カードによる売伝を処理センターに送付
- 〔アクワイアラー〕海外カードによる売伝を海外カード取引処理センターに送付
- 〔処理センター〕メンバー別にネットポジションを算定(クリアリング)、アクワイアラーおよびイシュアーに通知
- 〔処理センター〕全メンバーのネットポジションを決済銀行に通知、決済を依頼(セトルメント)
- 〔イシュアー〕資金決済
- 〔アクワイアラー〕決済銀行から資金を受領(加盟店への売伝立替払金回収)
- 〔イシュアー〕カード会員からカード取引代金回収
海外における決済
次の図は海外カード取引における決済フローを示したものです。ここではVISA/MasterCardを例にとっています。JCB、ダイナース、アメックスの場合も、処理センターの所在地を別にすれば仕組みは同様です。
- 〔イシュアー〕カード発行
- 〔カード会員〕海外で商品・サービス購入
- 〔海外加盟店〕売伝デポジット、売上代金回収
- 〔海外アクワイアラー〕売伝を中央カード処理センターに送付
- 〔国内アクワイアラー〕売伝を中央カード処理センターに送付
- 〔処理センター〕ネットポジションをアクワイアラーおよびイシュアーに通知
- 〔処理センター〕全メンバーのネットポジションを決済銀行に通知、決済を依頼
- 〔イシュアー〕資金決済
- 〔アクワイアラー〕決済銀行から資金を受領(加盟店への売伝立替払金回収)
- 〔イシュアー〕カード会員からカード取引代金回収
海外における決済は、取引処理センターの名称やカード利用地(加盟店所在地)など一部を除き、基本的には国内とほぼ同じです。決済銀行の所在地は、VISAは日本、MasterCardはアメリカです。また、カード処理センターは、現地通貨を米ドルに換算し、クリアリングとネットポジションの算定を行います。
なお、上記の表の中で留意すべき点は、①売上伝票の建値は現地通貨とすること(④~⑤)、②決済日はネットポジション通知日から2営業日後であること(図⑦)の2点です。
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