
クレジットカードの利用を支えるために働いているのがクレジットカードの社員であり、クレジットカード会社では、顧客がカードを「安全に」「便利に」使えるよう、さまざまな業務を行っています。
それでは、その業務の内容を見てみましょう。
クレジットカード取引の流れ
クレジットカード取引には、イシュアー(カード発行会社)とアクワイアラー(加盟店管理会社)が同一である場合と異なる場合の2つの取引があります。
オン・アス取引
カードを発行するイシュアーと加盟店を管理するアクワイアラーとが同一である場合の取引を「オン・アス」取引といいいます。5つの国際ブランド会社のうち、単独企業体であるアメックスとダイナースとが、常にこれに該当します。取引の流れは下の図のようになっています。
- カード発行
- 商品・サービス購入(カード提示)
- オーソリ請求
- オーソリ承認
- 商品・サービス提供(信用販売
- 売上代金請求
- 売上代金立替払い
- 代金請求
- 代金支払い
ノン・オン・アス取引
イシュアーAが発行したカードを、アクワイアラーBの加盟店が受け入れる(アクセプト)取引を、「ノン・オン・アス」取引といいます。カード発行主体と売上データ処理主体とが異なるため、両者間で取引データのやり取り(インタチェンジ)をする必要があります。
フランチャイズ制をとるVISAやMasterCard、また一部でフランチャイズ制をとるJCBに加盟するクレジットカード会社は、オン・アスとノン・オン・アスの両取引を行っています。ノン・オン・アス取引の流れは次の図のとおりです。
- カード発行
- 商品・サービス購入(カード提示)
- オーソリ請求
- オーソリ承認
- 商品・サービス提供(信用販売)
- 売上代金請求
- 売上代金立替払い
- 取引データ送付
- 取引処理センターより加工済み取引データをアクワイアラー・イシュアーに送付
- アクワイアラー・イシュアー間の決済
- 代金請求
- 代金支払い
:会員が海外でカードを利用した場合、*はそれぞれ海外加盟店。海外取引処理センター・海外決済銀行と読む。
クレジツトカード会社の業務内容
クレジットカード会社の業務内容は、表35のとおり、基本業務からセキュリティまで8つに分類されます。
基本業務 | 企画、営業、国際ブランド加盟(フランチャイズ)、法務、財務、提携、業務代行、ICカード、電子商取引(EC)、インターネット関連、その他緊急案件など |
---|---|
イシュアー業務 |
|
アクワイアラー業務 |
|
金融 | キャッシング、立替払い、加盟店手数料、資金調達・運用、ローン管理、保証、保険金処理、不良債権処理、電子マネーなど |
データ管理 | 顧客情報の収集/蓄積/管理、通信販売、DM業務など |
顧客サービス | 窓口相談、苦情処理(チャージバックを含む)、債務者相談、ヘルプデスク(商品・サービス案内、海外日本語サービス、観光・トラベル案内、医療案内)、チケットサービス、予約サービス、電話料金割引サービス、蓄積ポイント計算、会員誌の編集・発行など |
システム | コンピュータ管理、国際/国内回線接続・運営、信用照会端末やATMのメンテナンス、各種ソフト開発など |
セキュリティ | 紛失・盗難カードの処理・管理、偽造・変造カード対応、不良加盟店指導、カード不正使用取締、警察当局・国際ブランド・他社セキュリティ部門との連携、債権の強制取立など |
業務内容
加盟店業務、システム管理、債権回収などの分野で外部委託(アウトソーシング)が進んでいます。なお、今後の業務の重点は、次の点に移行するといわれています。
- クレジットカードとキャッシュカードとの一体化
- 電子商取引(EC)
- ポイントカードのさらなる模索
- システム機能の向上
- リスクマネジメント
カードの種類
最近クレジットカードのほか、デビットカード、ICカード、スイッチカード等、実にさまざまなカードの名前を耳にします。参考までにその主なものを分類整理すると、次のとおりになります。
決済方法 による分類 |
クレジットカード | 一括払い、分割払い、リボ払いを認めるカードの総称 |
---|---|---|
チャージカード | 翌月(翌々月)一括払い専用のクレジットカード | |
リボカード | リボルビング方式で返済するクレジットカード | |
キャッシュカード | 銀行預金を引き出すカード | |
デビットカード | キャッシュカードにショッピング機能を付帯したカード。即時、または2~3日語に島外預金口座からカード利用代金を引き落とし決済する | |
銀行POSカード | ||
プリペイドカード | 代金前払いカード(テレホンカードなど) | |
技術的規格 による分類 |
エンボスカード | カードを加熱して会員情報を刻印したカード |
磁気ストライプカード | カード面上に磁気テープ(磁気ストライプ)を張ったカード | |
ICカード | 磁気テープの代わりにICチップを埋め込んだカード | |
チップカード | ||
スマートカード | ||
顧客層 による分類 |
スタンダードカード | 標準顧客層向けのカード |
ゴールドカード | ゴールドカード優良顧客層向けのカード | |
プラチナカード | 超優良顧客向けのカード | |
ビジネスカード | 法人組織に対して発行するカード | |
コーポレートカード | ||
法人カード | ||
発行主体 による分類 |
シングルカード | 1つの主体が発行する1枚のカード |
プロパーカード | ||
プロプライアタリカード | 銀行のキャッシユカードなど | |
ハウスカード | 特定の企業内で通用するクレジットカード | |
ダブルカード | 2つの主体が発行する1枚のカード | |
スイッチカード | ||
ツインカード | ダブルカード、スイッチカードの機能を2枚のカードに分けたもの | |
トリプルカード | 3つの主体が発行する1枚カード | |
提携カード | 企業などがクレジットカード会社と提携して発行する自社ブランドのカード。提携カードにはポイントカード、キャッシ ュバックカードなど、さらに14種類の呼び方がある |
|
セキュリティ による分類 |
事故カード | |
紛失/盗難カード | ||
偽造/変造カード | ||
フロードカード | 不正カードの総称 | |
ホットカード | 事故カードの俗称 | |
無効カード | ||
白地カード |
クレジットカード関連の統計について
クレジットカード業界は、統計不在といわれることがあるが、これは必ずしも正しくありません。クレジット産業協会の「日本の消費者信用統計」、経済産業省の「特定サービス産業実態調査報告書」、警察庁の犯罪白書など、微細な計数を定期的に発表しています。
しかし、保険金支払額、不良債権償却額、不正行為による損失額の内訳などについては、公表を控えている場合もあります。これが、統計不在といわれる一因ととなっているのでのではないでしょうか。
クレジットカードに関する統計のうち、カード発行枚数、加盟店数、カード取扱高を読む場合には、次の点に留意すべきです。
カード発行枚数
カードを発行してもらったが、実際には使わないカードをスリーピングカードといいます。郵貯カードの場合、スリーピングカードの割合は全体の約3割ともいわれています。
カード業界では、国際ブランドカードに納めるアセスメントを節約するため、スリーピングカードの整理を積極的に進めている向きがあると聞きます。
加盟店数
加盟店の店頭には、数種類のステッカーが張られていることにはお気付きでしょう。
1つの加盟店が複数のアクワイアラーと契約を結んでいると、各カード会社はその店を自社の加盟店としてVISA、MasterCard等の国際ブランドカード会社に報告します。これが「重複加盟店」となります。
国際航空会社のように、本社が各国の支店または航空券発売所を一括し、本店所在地のアクワイアラーと単一の加盟店契約を結ぶケースもありますが、逆に多国籍企業の場合など、各国の支店がそれぞれ独立してその国のアクワイアラーと契約する場合もあります。したがって、発表される加盟店数にはかなりの増減があると見るべきでしょう。
カード取扱高
売上高の重複を避けるため、各クレジット会社は、自社が取り扱った分のみ(オン・アス取引+インターチェンジ・イン)を集計報告します。
インターチェンジ・インとは、ノン・オン・アス取引の金額から、①国内他社に仕向けた金額と②海外他社に仕向けた金額(アウトゴーイング)の合計額を差し引き、③国内および海外他社から仕向けられた金額(インカミング)を加えた数字を言います。
次に、ここで少し数字遊びをしてみよう。平均的な日本人は何枚のカードを持ち、1回当たり幾らほどの取引をしているのでしょうか。以下の統計を利用することにしましょう。
- カード発行枚数…約2億3,168万枚(「月刊消費者信用」2002年9月号)
- 日本人の人口…約9,200万人(20~ 74歳)(総務省人口推計月報、02・11・1現在)
- クレジットカード所有率…60~70%(日本信販「クレジットカードについての首都圏消費者調査」、ライフデザイン研究所「クレジットカードの利用状況」、東京都消費生活総合センター「TOKYO若者生活調査」)
- カード取扱高…28兆8,232億円(「月刊消費者信用」2002年9月号)
- カード年間利用回数…25回(貯蓄広報中央委員会「貯蓄と消費に関する調査」、日本信販「クレジットカードについての首都圏消費者調査」99年25回、01年27回)
- スリーピング率…25%と推定
以上の数字をもとにして計算すると、1人当たりのカード所有枚数は約5枚、1回当たりのカード平均利用額は約6500円になります。これが私達の日常生活の感覚に照らして妥当なものかどうか、あなたはどう思いますか?