クレジットカードをめぐる法体系とその歴史的変遷について

クレジットカードをめぐる法体系

2001年7月、業界待望の偽造カード罰則強化のための改正刑法が施行され、日本のカード犯罪取締法の整備は大きく前進してきました。しかし一方では、個人信用情報保護法などの重要法案の審議がさまざまな理由から先の臨時国会(2002)で廃案となり政府は、2003年の通常国会で新法案を提出する予定で、まだまだ先の話になりそうです。

今回は、偽造カード関連の歴史についてお話していきたいと思います。

偽造カード罰則強化のための刑法の改正

ところで、クレジットカードは法律上、どのように定義されているのでしょうか。割賦販売法2条は、「それと引き換えに、又はそれを提示して商品を購入することができる証票その他のもの」と定義しています。

これがクレジットカードを指すのは明らかですが、なんとも回りくどい言い回しです。前払式証票の規制等に関する法律にならい、「後払式証票」あるいはズバリ「クレジットカード」とならないものでしょうか。

民法、商法、刑法、紙幣類似証券取締法など、かかわりのありそうな法律を見ても、クレジットカードには一言も触れていません。このように、日本の法体系上では明確な位置付けのないクレジットカードですが、実社会では消費者にとって必要不可欠なものになっています。

さらに、エレクトロニクス技術、インターネットの進歩に伴い、ICカード化が進むなど技術面でもクレジットカードは飛躍的な進歩を遂げつつあります。

クレジツトカード関連法の日米比較

クレジットカード先進国のアメリカでは、包括的基本法として消費者信用保護法があり、これと並行して、クレジットカード発行法、貸付真実法、公正信用報告法、公正債権取立行為法、融資差別禁止法、個人金融情報保護法など、クレジットカードに関連する法律が多数存在します。

日本におけるクレジットカードにかかわりがありそうな法律の主なものをリストアップすると、次のとおりとなる。これをよく見ると、法の不備といわれている分野が、①個人信用情報保護と②カード犯罪取締の2つの面であることが浮かび上がってきます。

基本的な法律

刑法、民法、商法、独占禁止法、外為法、貯金法(郵便貯金規則)、商標法、工業標準化法、銀行法、弁護士法など

営業、経済にかかわる法律

割賦販売法、貸金業規制法、サービサー法、訪問販売法(特定商品取締法)、利息制限法、出資法、破産法、古物営業法など

保険に関する法律

保険業法、損害保険料率算出団体法など

回線、磁気テープ等に係る法律

電気通信事業法、有線電気通信法など

その他

出入国管理および難民認定法、行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報の保護に関する法律、国家公務員法、地方公務員法、自衛隊法など

クレジツトカード犯罪取締法の変遷

カード元年(1960年)以降の日本におけるカード犯罪の変遷と取締法との関係は、次の4つの段階に分けて見ることができます。

クレジットカード等関連の主な犯罪行為 取締法令
第一期 ①窃盗、空巣、スリ、車上荒らし、昏睡強盗、蝙取、拾得
刑法
窃盗(235)、強盗(236)、詐欺(246)、恐喝(249)等 遺失物横領(254)
②代金支払いの意思も能力もないのにクレジットカードを利用(ショッピング/キャッシング)
刑法
詐欺(246)、窃盗(235)
③虚偽申請でカード入手
刑法
私文書偽造等(159)

第1期(1960年代)

クレジットカードは始まったばかりです。犯罪形態は、盗まれた、掏られた、拾ったカードを使った、などシンプルなものばかり。これに対応する法律は刑法で十分であった時代です。

第二期 ④CD/ATM関連・回線タッピング・磁気テープデータの窃取。改ざん・電磁的記録損壊・電子計算機に不正データ入力・電子計算機不正使用による不当・利得
有線電気通信法(1984年改正)
通信の秘密不可侵(9)、通信設備損壊・妨害(13)
刑法(1987年改正)
電磁的記録不正作出・供用(161の2)、電子計算機損壊等業務妨害(234の2)、電子計算機使用詐欺(246の2)

第2期(60年代後半から80年代後半)

磁気テープの読取、初歩的なクレジットカードの変造/偽造が散見され出し、これに対応して刑法の一部(電磁的記録不正作出など)並びに有線電気通信法が改正された時代。

第三期 ⑤蛇頭、集団密航
出国管理法(1997年改正)
営利目的で集団密航者を上陸させる(74の2)、営利目的で本邦向け、本邦内で輸送(74の2の2)、船舶準備(74の3)、集団密航者を受け入れ、移送、かくまう(74の4)、予備(74の5)、不法入国を容易化(74の6)、国外犯にも適用(74の7)、強制退去外国人をかくまう(74の8)
⑥債権取立行為
貸金業規制法
取立行為の規制(21)
⑦債権管理・回収
弁護士法
非弁護士との提携禁止(27)、譲り受けた権利の実行を業とする、ことの禁止(73)、債権管理回収業に関する特別措置法(サービサー法)、99年2月施行
⑧個人信用情報、窃取・漏えい、横流し、目的外利用
包括的保護・取締法なし
行政機関の保有する電子計算機処理に係わる個人情報の保護に関する法律 88年施行
国家公務員法(100)、地方公務員法(34)、自衛隊法(59)、弁護士法(23)、割賦販売法(42の4)、97年、99年改正、貸金業規制法(30の2)、97年、99年改正、有線電気通信法(9、13)、刑法(134)、その他、電気通信事業法(4、104)、旧大蔵省、通産省局長通達等(秘密の保護)
⑨盗品闇処分
刑法
故買(256、2項)
⑩地下銀行
銀行法
営業免許(4)
⑪マネーロンダリング
銀行法
届出事項(53)
新外為法
届出(55)
麻薬取締法
届出
⑫クレジットカード偽造
刑法
私文書偽造(159)、同行使(161)、電磁的記録不正作出および供用(161の2)
海外偽造カードの国内持込、カード情報窃取、スキミング、偽造カード所持、偽造カード作成準備、ネット上のなりすまし
取締法なし
経済通産省は、2002年3月、現行法の解釈指針を発表

第3期(80年から90年代)

カード犯罪が次第に複雑化し、刑法のさらなる改正が進み、その他の既存法も動員され、新法の制定が徐々に見られるようになった時代。

第四期 ⑬マネーロンダリング
組織犯罪処罰・犯罪収益規制法
届出(54~ 57)、2000年2月施行
⑭海外偽造カードの国内持込
関税法
12000年3月、適用条文変更により罰貝り強化
無許可輸入(111)→ 輸入禁制品、(関税定率法21)の無許可輸入第 (109)
⑮ぼったくり
東京都ぼった くり防止条例
2000年11月
⑯コンピュータ不正アクセス[他人のコンピュータを無断作動し、データを利用(引き出し)公安委から調査を依頼された者がデータを漏えい不正アクセス助長]
不正アクセス行為の禁止等に関する法律
2001年2月(3条)、(6条3項)、(4条)
⑰インターネット関連不法行為(盗聴、無断コピー、なりすまし、オークション絡みの不正行為、わいせつ物領布、名誉毀損、薬の無許可販売、売春、脅迫、銀行日座・カード情報・パスワード等不正売買、システム損壊、データ偽造。改ざん等)
包括的規制法なし。個別法による取締り
刑法、著作権法、薬事法、児童買春・児童ポルノ禁止法 等
⑱電子署名および認証業務(虚偽申立て、電子証明書上の虚偽表示、秘密漏えい)
電子署名及び認証業務に関する法律
2001年4月施行(41条)、(42条)
⑲e-コマース上のトラブルとネット上の通信販売トラブル
特定商品取締法
2001年6月施行。訪問販売等に関する法律の改正、改称
⑳偽造カード(偽造、行使、譲渡、貸し渡し、輸入、所持、偽造目的でデータ取得、スキミング、データ提供、保管、準備、偽造未遂、関連法の改正)
刑法
支払用カード電磁的記録不工作出(163の2)、不正電磁的記録カード所持(163の3)、支払用カード電磁的記録情報の取得、提供、保管、作出準備(163の4)、未遂(163の5)、① 関税定率法21条に「偽造カード」え追加、② 組織犯罪処罰・犯罪収益規制法別表2号へ、改正刑法163の2から5の罪を追加
電子メールー方的送り込み
特定商品取締法
一部改正
特定電子メール送信適正化法
(いずれも2002年6月施行)

クレジットカード犯罪取締法の変遷

第4期(2001年以降)

偽造カード対策のための刑法の大幅改正が実現するとともに、クレジットカードに係る新法制定の模索が本格化し始めた時代。

マネーロングリング、海外で偽造されたカードの国内への持ち込み、コンピュータ不正アクセス、インターネット上の不法行為、ネット通販のトラブル、個人情報漏洩など犯罪は複雑多様化し、手口もきわめて高度化してきました。

これに対応して、取締当局も刑法の改定、関税法の運営強化、不正アクセス禁止法の制定、特定商品取締法の制定など、本格的取り締まりに乗り出し始めた時代。

次のページでは「クレジットカード関連の法律によく出るの用語の説明」については次の回で詳しくお話していきましょう。

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