クレジットカードの不良加盟店をめぐる犯罪と対策

クレジットカードの不良加盟店

アメリカでは、カード犯罪類型のうち、不良加盟店によるものが上位にランクされ、VISA、MasterCardなど国際ブランドカードヘの年間被害額は700億~1000億ドルと推計される。では日本ではどうでしょうか。

日本のクレジットカードの加盟店の現状

加盟店数は、延べ2100万店(2001年度末)と膨大な数に上る(月刊消費者信用2002年9月号)。ただし、カード会社(アクワイアラー)が業界団体に報告する店の数は重複しており、逆に多数の支店を擁するチェーン店を1つの店と数えることもあり、実数把握はきわめて難しいのですが、いずれにせよ、膨大な数の加盟店が活動していることは間違いない事実です。

アクワイアラーによる加盟店囲い込み競争、甘やかし、犯行立証の困難さなどもあって、加盟店の犯罪やその被害額はなかなか表沙汰にならないのが実情でしょう。

犯罪事例は、脅迫、横流し、共謀などなど実に多岐にわたっています。まずは次の表をよく読んでみて下さい。

加盟店のクレジットカード関連不正行為の類型

スキミング 本サイトのスキミングとブランコスリを参照して下さい。
カード情報横流し
  • POC(point of colnpronlise) 第1章13項3参照
  • 電話をかけて、巧みに暗証番号を聞き出し、横流しする
  • 偽装倒産 カード情報を横流しした後、わざと倒産
売上伝票の操作
  • 伝票分割 フロアリミットを回避するため
  • 複数伝票 後日、自紙伝票を使って架空の売上を立てる
  • 端末操作 端末に架空の取引データを入力
共謀
  • コーチ屋と組み、多重債務者による買い回りを黙認
  • 犯罪グループと組み、偽造カードの使用を黙認
  • 海外の業者と組み、国際電話料金の一部を不正入手
  • デートクラブと組み、加盟店店員がホテルに出向き、客のカードを使って、高額の買い物をし、カードは戻しておく
  • キャッチバーが加盟店と組み、法外な飲み代を払わせるために客を強請して、同店で高額商品をカードで買わせ、品物を即時売り戻させて、その代金で飲み代を払わせる
その他
  • タコの足食い(自己キャッシング) 架空伝票を利用して資金繰りの一助とする。カードの[期限の利益]を悪用するケース。代金は後で返しておく。
  • 夜逃げ 加盟店契約を締結し、数力月営業した後、多額の架空売上伝票をデポジットし、代金を回収した後、行方をくらます。
  • 名板貸し 加盟店契約をしてもらえない店が、専門店会などの団体にぶら下がって加盟店と偽る

資料:全国紙、業界紙、MasterCardセキュリティ資料等から私が作成しています。

不良加盟店は主に3つに分類することができます。

  1. 店ぐるみ、あるいは特定の店員が不正を働く店。
  2. 客による威圧的な態度や脅しに屈して、不正なカード使用を黙認する店。
  3. 外部犯罪者のターゲットになりやすい店。警備が薄い、逃亡が容易な構造の店。女性店員だけの店も狙われやすい。店員教育が行き届いていない店。

加盟店によるカード犯罪が発生しやすい理由としては、次の3点が挙げられます。

  1. 加盟店は、カード情報を知りうる最前線にあり、伝票操作をしやすい立場にあること。
  2. 外部からの働きかけ、脅迫・誘惑の機会が多く、店員が共犯者の立場に追い込まれやすいこと。
  3. カード会社が囲い込みを急ぐあまり、ややもすれば加盟店を甘やかしがちであり、加盟店契約の遵守が徹底されておらず、加盟店の自己防衛機能が弱くなりがちであること。

なお、やや旧間となるが、クレジット業界のカード・セキュリティ研究委員会調べによる、わが国のクレジットカード不正使用店の業種のワースト5を紹介しておきましょう。

最近はこの順位が若干入れ代わったようですが、そのまま述べておくと、1位が百貨店、2位はAV機器販売店、3位はガソリンスタンド、4位は宝石店、5位は家電販売店・カメラ販売店、となっています。

では、カード業界は、このような犯罪行為に対抗して、どのような手を打っているのでしょうか。結論から先に言えば、どうも後始末的なものが多く、先取り的(proactive)な対策が少ない憾みがあるようです。対抗策をリストアップすると次のとおり。

  1. 加盟店教育、加盟店啓発活動の活発化
  2. 売上代金の差し押さえ。売上代金の支払いを問題解決まで差し止める
  3. チャージバック制度の活用(第2章参照)
  4. 加盟店見回り、張り込みの強化。一部のカード会社が行っている買い回リチェックシステム(JPR=JCCA pos report、JCCA=Japan Cradit Card Association(日本クレジットカード協会))の効果は大きいと言われている
  5. 加盟店契約の打ち切り。最後の手段として加盟店契約を切ってしまう手段があるが、このような店の中には、なお名板貸しで生き残りを図ろうとするしぶとい店もある

以上のほか、なるべく早期に実現が望まれる対策として、次の2つがあります。

  • 不良加盟店情報交換システム(credit management deta center、CMD)
  • を発展させて、各業態間で情報交換を電子的に行うことを可能とするシステムの開発。VISA、MasterCardなどの国際ブランドカードが持っている加盟店契約打ち切リファイル制度の日本版の実現も望まれる

  • 加盟店モニター制度の開発と汎用化。一部のカード会社は既に実施しているが、業界全体に通用する日本的なチェックシステムの開発が望まれる。国際プランドカードの8%マーチャント・ウォッチング・システムなどが参考となるだろう

SNSでもご購読できます。