クレジットカードの不正使用損害を回避するチャージバック!

チャージバックとは?

「チャージバック」という言葉が世間に知られるようになったのは、比較的最近のことです。それまでは、クレジットカード業界の専門用語の1つにとどまっていました。

たとえば、手元の辞書を見ると、1985年に発刊された『クレジット用語 英和・和英辞典』(日本クレジット産業協会発行)や『クレジット用語辞典』(岩崎和雄編著)には、この語はまだ登場していません。1998年の『クレジット・金融用語辞典』(西ヶ谷葉子編著)に顔を出しているのは確認できます。それほど最近(といっても30年も前の話ですが…)にできたものなのです。

また、「チャージバック」の言葉は、「クレーム申立て」、「異議申立て」、「不服申立て」などと呼ばれる場合もあることを申し添えておきます。

チャージバックの意味と効用とは?

「チャージバック」を直訳すると、「請求をつき返す」あるいは「取られた代金を取り戻す」などの意味となります。国際的な平均値でみると、クレジットカードが1万回利用されると、15~20件のトラブルが発生するといわれています(日本国内では2~3件程度)。

フランチャイズ制をとるVISAとマスターカードでは、二百数十力国、2万数千余の金融機関等に張り巡らしたネットワークシステムを維持・運営する関係上、このトラブル処理のために共通かつ厳格なルールが必要となります。これがチャージバックルールと称されるものです。

他の国際ブランドカード(アメックス、ダイナース、JCB)も紛争処理ルールを備えています。ただ、アクワイアラー(加盟店業務を行う会社)とイシュアー(カード発行会社)との間で取引データをやりとり(インターチェンジ)する、フランチャイズ組織のVISAとマスターカードのルールが一番わかりやすいと思います。

これら両ブランドのチャージバック制度を考察してみましょう。

チャージバックの定義

VISA、マスターカードはチャージバックを次のとおり定義しています。

「イシュアーがアクフイアラーからカード取引データの提供(present ment)を受けた後で、異議を申し立てる資金移動を伴う行為をいう。これにより、イシュアーはアクフイアラーによって既に徴収されたカード取引代金を取り戻すことができる」

これを若干広く解釈すると、カード会員がカード利用明細書を見て、クレームを申し立て、イシュアーがこのクレームに理ありと認めた場合、一定のルールに従って、アクフイアラーに対してこの請求を不当とし、先取りされた代金を取り戻す行為といえます。

OECDによるチャージバック会議

OECDが初めてチャージバックを取り上げ、同制度の世界的統一に乗り出したのは、1994年6月の「消費者のための世界市場」会議でした。その背景には、不正行為や欠陥商品の販売、通信販売等でのトラブル急増から消費者を救済する狙いがあったのです。この会議を受けて、消費者政策委員会(CCP=Committee for Consumer PoHcy)がチャージバックの調査を開始しました。

その内容は、「世界市場における消費者の救済=チャージバック」と題するリポートにまとめられました。その後、これをめぐって各国政府でも検討が続けられ、現在に至っています。各国の対応はバラバラで、統一の狙いは難航していると言われています。

カード会員規約での扱い方

クレジットカード業界においては、チャージバックはセキュリティ対策とともに、消費者に対するアフターケアの双璧となっています。各カード会社ともこれにかなりの力を注いでいるのですが、その割には、日本では消費者のチャージバックヘの理解度がアメリカに比べると低いようです。なぜでしょうか?

クレジットカードヘの馴染み具合(1人当たりの年間使用回数は平均してアメリカで120回程度、日本では25回前後といわれる)もあるかもしれませんが、なんといっても、カード会社の会員向け教育の深浅に差があるからではないでしょうか。これは、会員規約におけるチャージバック制度の取り扱われ方にも現れています。
次の表は、大手クレジット会社10社のチャージバックに関連する条項をまとめたものです。

会員規約vsチャージバック関連条項

チャージバックそのものを扱う条項 規定なし 10社
会員と加盟店との紛争解決 会員が直接加盟店と話し合う(カード会社には責任なし) 3社
規定なし 7社
カタログ・現物相違など 会員が直接加盟店と話し合う(カード会社に責任なし) 8社
規定なし 2社
支払停止の抗弁 リボ払い等の場合は認めるが、金額・支払回数が一定未満または海外利用の場合は認めない。 9社
鬱規定なし 1社

チャージバックについての説明は皆無であり、カード取引でトラブル発生の場合は会員が直接解決に当たるべし、との姿勢がありありとうかがわれる。これでは、消費者のチャージバックに対する理解度が低いのも無理もないことですね。

米国では、イシュアーのカード会員向教育が徹底しており、証拠書類の収集も容易であります。一方、日本では、会員への対応と社内での苦情処理との間が切り離されているように思われます。たとえば、会員が支払いを免除されたとしても、それがチャージバックが成功した結果なのか、イシュアーが損失を丸飲みした結果なのか、会員には知らされないケースが多いからです。

チャージバックをめぐる最近の特徴

クレジットカード業界では、チャージバックの動きは、その時代をよく反映するといわれています。

チャージバックの動き

次の表は、某大手カード会社の情報をもとに、私が作成したものです。最近のチャージバックの動きが如実に示されているのではないでしょうか。

2000年6月における1年間のチャージバック取扱件数

ネット上のトラブル(利用覚えなし、解約できない等) 40.0%
一般、利用覚えなし 12.4%
通販、利用覚えなし 4.6%
電話、利用覚えなし 4.5%
T&E 8.1%
その他 5.3%
74.9%
  • 利用覚えなし(通販およびインターネット上)
  • インターネット関連(解約できない、解約したが請求が停止されない、なりすまし、多重請求、ネズミ講、富くじ等)
  • T&E(旅行・娯楽)関連
  • 通販関係(なりすまし、商品未着、品質相違等)

などのトラブルが目立っているようです。

アクワイアラー責任論の台頭

チャージバックの争いでは従来、イシュアーの責任が問われるケースが多かったのですが、最近は、不良加盟店を管理するアクフイアラーの責任を重視する傾向が強まってきています。

業界が直面する2つの問題

CPP問題(common point of purchase)

CPPとは、「カード情報を盗まれやすい加盟店」を指します。こうした加盟店は、偽造カードの温床となります。ちなみに、偽造カード被害は付保されません。

ネット上のカードをめぐるトラブルと不正行為の急増

インターネット利用人口の急増に伴い、インターネット取引が急成長しており、決済の主役もクレジットカードとなりつつあります。こうした背景から、インターネット上のカードをめぐるトラブルと不正行為が急増しています。さらに、インターネットには国境がないため、取締法の特定が困難であるなど、クレジットカード業界の悩みは尽きません。

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