アクワイアリングとは、クレジットカード会社の加盟店契約業務

アクワイアリング

アクワイアリングは、クレジットカード会社の事業活動の中で、加盟店契約業務のことをいいます。これは、クレジットカードを受け付ける加盟店を開拓して契約を結ぶことで、アクワイアラーが担当します。

今回はこの「アクワイアリング」についてご紹介していきたいと思います。

アクワイアリングとは

英語でアクワイア(acquire)とは「手に入れる」を意味しているところから、カード業界では加盟店の売上伝票を獲得する会社すなわち加盟店契約会社を、アクワイアラー(acquireする人)と呼ぶようになりました。

カード会社にとって、加盟店は生命線であり、加盟店を選定し、維持し、管理し、優良加盟店に育て上げることは、カード発行(イシューイング)とともに、クレジットカード業務の2つの柱といわれています。

加盟店の骨子については、1983年の通産省通達「個品割賦購入あっせん契約に関する消費者トラブルの防止について」に次のとおり示されています。

  • 加盟店契約締結時の審査および締結後の加盟店管理
  • 消費者相談・苦情処理体制
  • 役務の付帯した商品販売におけるトラブルの防止
  • 消費者の契約締結意思の確認
  • 契約についての加盟店指導

1997年1月、VISAインターナショナルは、日本信販、クレディセゾン、ダイエーOMCの3社(イシューイング業務のみを認められたスペシャルライセンシー)に対し、新たにアクワイアリング業務を行うことを認めました。カード業務の両輪を行うことが認められたことにより、3社は銀行系カード会社と立場が平等になったわけです。

しかし、最近、加盟店手数料の引下げ圧力が強まり、カード犯罪増加に伴うアクワイアラー責任論の声が高まってきたので、アクワイアリング業務を重荷とする声が一部で囁かれ出したのも事実です。

加盟店の開拓

アクワイアラーにとって、新しい加盟店を開拓する利点は次のとおりであ
る。

  • 加盟店で自社カードが利用された場合、加盟店手数料が全額自社収入になる(オン・アス取引、前述本章4項参照)
  • その加盟店で、他社のカードが利用された場合、加盟店手数料の一部が自社収入となる(ノン・オン・アス取引、同上)
  • カード会員情報が手に入る

アクワイアラーとしては、貴重な収入源である加盟店手数料を他社に譲りたくないのが本音でしょう。ところが、国際ブランドのVISAやMasterCardは、メンバーに対し、自社が苦労して開拓した加盟店を、国の内外を問わず、すべての他社カードヘ開放することを義務付けています(これを無差別アクセプタンスといいます)。

その見返りとしては、新たに市場に参入したメンバーが、先輩メンバーに対して一定の補償を支払うこと、並びに加盟店手数料を一定の割合で折半することが定められています。

加盟店開放問題では、かつて日本信販のVISA加盟(1986年10月)をめぐり、日本信販のカードが、既存のアクワイアラーの加盟店で受け入れてもらえない、あるいは、受け入れてもらえたとしても、その決済が宙に浮く(幽霊伝票)などの事態が発生したことがありました。

加盟店開拓に際しては、アクワイアラーは、店の財務内容の健全性、売上動向、消費者トラブルの発生頻度、自社並びに国際ブランドカードの定めるルールとの適合能力、社会的評価などを調査し、併せて営業施設を実地検証して集客能力などを調べる必要があります。人手、時間、費用のかかる仕事です。

そのため、アメリカの先例に習い、90年代半ば頃から、この加盟店開拓業務を第二者に委託する動きが大手銀行系カード会社の間に芽生えてきました。いわゆるアウトソーシングの始まりです。1997年1月、ディーシーカード、ミリオンカード、日本ダイナースクラブ、アメックスによる「日本カードビジネス社」が設立されたのがその好例です。

この4社の試みは今後、業界で広がつていくとみられています。

加盟店契約の内容

加盟店契約の内容については、国際ブランドカードは、最低限度の項目を定めるのみで、あとは、その国の法令の範囲内でアクワイアラーの裁量に任せています。主な契約内容は次のとおりです。

カード取引全般

  • カードの無差別アクセプタンス
  • ブランドマークの店頭表示
  • サーチャージ(加盟店手数料の消費者への転嫁)禁止
  • カードの視認チェック
  • 会員の本人確認
  • 無効カードのチェック

財務関連

  • 加盟店手数料
  • 売上伝票の作成
  • フロアリミット
  • 売上伝票のデポジット方法

紛争解決とセキュリティ

  • オーソリゼーション
  • 検索請求への協力
  • チャージバックルールの受け入れ
  • 実地調査の受け入れ
  • 無効カードの回収
  • カード不正行為防止
  • その他禁止事項(たとえば、カード受入拒否、加盟店名義貸しなど

その他

  • 加盟店教育の受け入れ
  • 販売促進関連事項
  • 契約の一方的取り消し

加盟店手数料

加盟店は、会員がカードを利用して商品・サービスを購入する場合、売上伝票に会員のサインを求め(一定の場合は省略できる)、これと引き換えに商品を売却します。その後、売上伝票をアクワイアラーに送付(デポジット)して、売上代金を回収します。

アクワイアラーは、カード会員に代わって立替払いをする形となるが、その際、アクワイアラーは一定の手数料を売上代金から差し引いて加盟店に支払いあmす。これを加盟店手数料とをいいます。

加盟店の業種は、物販、サービス、飲食など、千差万別ですが、手数料率はどのようにして決められるのでしょうか。通常、加盟店の業種、加盟店との力関係、規模、アクワイアラー間の競争などが決定要因となります。

高率なところ(零細な飲食店等)で7%前後、低いところ(航空会社、百貨店等)で1~2%とその幅は大きく、平均で3%といったところでしょうか。最近は、加盟店からの引下げ要請圧力や外資系企業の対日進出などもあり、料率は低下傾向にあるようです。

加盟店手数料は、アクワイアラーとイシュアーとの間の売上伝票のやりとりに伴い、一定のルールで配分されます。国際取引の場合は、国際ブランドカードがそれぞれ料率を決定します。国内取引の場合、VISAは加盟店公開料方式、MasterCardの場合は、イシュアー固定料率方式を採用しています。

オーソリゼーシヨン

加盟店は、カード利用金額が一定の金額を超えるときには、アクワイアラーに対し、信用照会請求(=AR)を行うことを義務付けられています。この一定の金額はフロアリミットと呼ばれていますが、時代の流れ、信用照会端末機の普及、カード犯罪の多発化などを背景として、次のとおり次第に引き下げられてきており、今や限りなくゼロに近づいてきています(全件オーソリ制度の採用)。

  • 1994年1月 10万円から5万円に引下げ(全加盟店)
  • 1996年1月 5万円から3万円へ(オンライン加盟店)
  • 1998年1月 3万円(全加盟店)
  • 1999年1月 3万円から1万円へ(オンライン加盟店)

その後、できる限リゼロフロアリミットヘ。

セキュリティの観点、とくにブランドカードの場合には、たとえば、CVVやCVC(第1章3項の(2)参照)などへの対応も必要であるので、金額にかかわらず、オーソリをかけることが望ましいが、コスト面から一律に論じることは難しいでしょう。

売上伝票の処理

加盟店は、売上伝票を作成すると、代金を回収するためにこれをアクワイラーヘデポジット(送り込む)する。その方法は次のとおりです。

  • 古典的なやり方、伝票をゴム紐で東ねて持っていく
  • マグネティック・テープに入力して持ち込む
  • 信用照会端末機(G-CAT、第3章11項参照)を利用する
  • CDS(CREDIT DETA SORTING、NTTデータ通信)のサービスを利用する
  • J-トランス(JCB関連会社の日本カードネット社が加盟店に展開する端末機、JET’S)のサービスを利用する

アクワイアラーは、これらの売上伝票をオン・アスとノン・オン・アスとに分類し、さらに、ノン・オン・アス取引分を国内分と海外分とに分けて、国内分は国内のイシュアーヘ、海外分は国際ブランドカードの処理センターヘ送り込みます。これにより、立替代金が回収される仕組みになっています。

回収のサイクルは、送り込みは毎日、代金受け取りは、国際ブランドカードは毎日、国内では7~10日日となっています。

加盟店の監督

カード取引をめぐる紛争、カード犯罪など、加盟店はトラブル発生の場になりやすいのです。アクワイアラーは、次のような対策を講じなければならないでしょう。

国際的な対策

国際ブランドカードは、加盟店別に総取引額(件数)に占める不正取引額(件数)の比率を常時監視し、その割合が一定水準を超えると、その店をメンバーに警告するシステムを持っています。

国内における対策

  • 加盟店教育・巡回
  • 売上伝票モニタリング
  • 不正カード取引探知システムの配置
  • チャージバックの活用
  • 売上代金の支払停止
  • 加盟店契約の打切り
  • 加盟店情報交換制度(CMD=credit management dataセンター、日本クレジット産業協会と信販協会とが運営)と買い回リチェックシステム(JPR=JCCA POS report)の活用

アクワイフラー責任論の台頭

従来は、カード取引のトラブル、不正行為の責任は、原則としてイシュアーが負うという考え方が支配的でした。しかし、偽造カードを中心とする被害額の急増を背景として、加盟店を監督する立場にあるアクワイアラーの責任を問う声が高まってきています。

国際ブランドカードは、その動きに対応して、アクワイアラーの責任を問うプログラムの実施に乗り出した。これは、一定の水準を超えるトラブル(犯罪を含む)が認められる加盟店に対し、

  • イシュアーがチャージバックを仕掛けることを認める
  • アクワイアラーに対し、一定のペナルティを課す
  • アクワイアラーによる特別監査体制を強化させる

などの施策を骨子としたものです。アクワイアラー責任論が今後、どう展開されていくか注目されるところです。

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