CD/ATM(現金自動支払機・現金自動出納機)の歴史と課題

CD/ATM(現金自動支払機・現金自動出納機)の歴史とこれからの課題

銀行業界にはいま、金融再編と称する大波、小波が押し寄せています。統合、保険業や証券業、消費者金融業界との提携、ネット専業銀行の誕生、異業種の参入、コンビニのATM展開等、数年前まではおよそ想像もできなかった新しい現象が繰り広げられています。そして、このお神輿ワッショイの激しい動きの中心にCD/ATM(以下、ATMという)が鎮座している事実には大いに興味がそそられます。

これら新しく登場してきた銀行やコンビニなどは、すべてATMを全面に押し立てて無店舗、24時間営業、低コストを武器に既存の勢力圏内に乱入しつつあるやに見受けられます。しかし、一方において、米国ではcitiグループやバンクワン、日本でもUFJ、みずほ、三菱東京各グループが不採算を理由にネット専業銀行から手を引く動きを示し、また、2002年2月、米国通貨監督局が多額の不良債権を抱えたネット専業銀行ネクストバンクに対し、銀行閉鎖措置をとった動きもあり、今後の展開には予断を許さないものがうかがわれます。

ATMの設置台数

わが国の金融機関が設置するATMの台数は、2002年3月末現在、約11万7000台で、これに郵便局、クレジット会社などの分を加えると、総数では約16万台に達しました(全銀協および月刊消費者信用01年9月号調べ)。この16万台の既存勢力に加え、次の表のネット専業銀行や異業種参入企業などの新興勢力が参入を図っているわけで、これが実現すると、全国のATM台数は17~18万台に達すると見込まれています。

ATM設置台数

都市銀行 28,958台
地銀 35,635台
第二地銀 12,917台
信託 933台
長銀(新生、あおぞら、興銀、商中) 258台
信金 19,653台
信組 2,795台
労金 2,350台
農協 13,116台
漁協 290台
116,905台
郵便局 25,736台(01年末)
証券 516台
クレジットカード会社 5,928台
消費者金融会社 10,448台
総計 159,533台

ネット専業銀行などの新興勢力

ネット専業銀行 主な株主 ATM台数
ジャパンネット銀行 三井住友銀行 未詳
IYバンク銀行 イトーヨーカ堂グループ
ソニー銀行 ソニー、三井住友銀行 未詳
イーバンク 日本テレコム、伊藤忠商事 未詳
スルガ銀行ソフトバンク支店 未詳
みずほ銀エムタウン支店 未詳
UFJインターネット支店 未詳
BMWジャパン支店 未詳

*:現在3,650台、5年後に7,150台を見込む。

異業種参入企業

コンビニ 運営会社 ATM台数(2001年4月当時)
am・pm 三井住友銀行 1,075
ファミリーマート イーネット 884
サークルK イーネット 340
スリーエフ イーネット 92
ミニストップ イーネット 70
サンクス イーネット 37
ディリーヤマザキ イーネット・および郵貯 16
セブンインブン IYバンク銀行 約9,000店に設置予定
ローソン ローソンATMネットワーク 未詳

(注)コンビニATMは、am・pmジャパンが1999年に設置したのが最初。東京三菱銀行は、コンビニATMを最大限に利用し、自行店舗ATMのリストラを進める方針。
UFJ銀行は、無人店舗を中心とする自行のATMの維持を優先し、コンビニATMはあくまで補完と見る方針。

CDが誕生したのは約50年前のこと。その間、稼働時間が延長され、設置場所が拡大され、機能の多様化が進みました。以下、その成長振りをフォローしてみましょう。

CDの誕生

1969年1月 オフライン型CD設置
1971年 オンライン型CD設置
1978年8月 郵貯CDオンラインシステム稼動

なお、ATMには国内専用のものと海外発行のカードを対象とするものとがあります。以下では、主に国内専用ATMについて述べ、後者については最後に若干触れる程度にしておきたいと思います。

ATMの稼働時間

CDは銀行店舗内に初めて設置されました。したがって、その稼働時間は銀行の営業時間内に限られていました。その後、顧客の利便性向上のため、一部の銀行が稼働時間を若干延ばしましたが、この状態はほぼ80年代半ばまで続きました。それから約20年後の今日、ATMは365日24時間稼動が普通となってきました。その理由としては、いくつかの直接あるいは間接的な要因が挙げられるでしょう。

直接的要因

  • 85年10月、政府が内需拡大策の一環として、ATM稼働時間の延長を勧めたこと。郵政省もこれに対応して、同年12月に稼働時間を1時間延長しました。
  • 86年8月に金融機関の第2、第3土曜日休日制が、また89年2月に完全週休2日制が実施されたが、銀行はこれに応じて稼働時間を再延長しました。
  • 97年7月、大蔵省の機械化通達(84年5月以降)が金融ビッグバンの流れの下で廃止され、これにより時間規制は完全に取り払われました。

間接的要因

  • 銀行と郵貯との間のATMをめぐる激しいせめぎあい。
  • ATMオンラインの提携の動き(後述)。
  • 消費者からのサンデーバンキングの需要の高まり。並びに金融機関側のキャッシングサービス意欲の高まり(サンデーバンキングの開始時期は、一部の地銀および信金が87年夏、都銀。地銀が91年1月、MICS(後述)が91年9月)。

ATM設置場所

前述の大蔵省機械化通達は当初、銀行のATMはもちろんのこと、CATやPOSの設置場所、台数、稼働時間を厳しく規制していました。87年、クレジットカードを使って、銀行のATMからキャッシングすることが認められました(その銀行に口座を持つ会員のみ)。

その後、80年代後半に入ると、いわゆる夜型人間が出現するなど都市居住者の生活形態が変化する兆しが現れ始めた。これにすばやく対応したのは、上記機械化通達の対象外であった流通系クレジットカード会社で、店舗外にATMを設置し(スタンドアローン型)、当時話題を呼んだ。これを横日で見ていた一部の都市銀行は、完全週休2日制を機にコンビニと提携して大都市圏においてATMを展開し、キャッシングサービスを提供する構想を打ち出しました。

大蔵省はこれを受けて、設置場所の規制を緩和するとともに、店舗外ATM設置枠を廃止し、設置を届け出制にしました。これが今日見られる大規模な銀行による無人店舗、全国展開のチェーンストア、コンビニ、JR等の主用駅構内におけるATM展開につながっていく引き金となったわけです。

ATM回線(ネットワーク)の展開

次の表に、ATM回線の誕生の足取りを示しておきます。

ATM回線の誕生

1980年3月
4月
10月
10月
11月
SICS(都銀6行間)
TOCS(都銀7行間)
ACS(地方銀行間)
SCS(相互銀行間)
しんきんネットキャッシュサービス(信用金庫間)
1983年4月 SOCS(信託銀行間)
1984年1月
3月
4月
6月
BANCS(SICSとTOCSの統合)
全国農協貯金ネットサービス
ROCS(労働金庫間)
クレジットカード会社(UC)、母体行のATMでキャッシング開始
1985年11月 ジョイント(日本信販を中心とする信販会社17社間)
NICE(オリコ、CF、ライフ、ジャックス4社間)
1987年4月 SANCS(信用組合間)
1989年11月 都銀と地銀、「CDネット中継センター管理機構」設立
1990年2月 MICS(全国キャッシュサービスオンライン提携網)設立
1994年11月 LONGS(興、長銀、商中間)

ATMオンライン提携

給与の回座振込みは1965年ごろから増え始め、個人の銀行引出しが頻繁になったので、銀行はこれに対応し、店舗内にCDを設置し始めました。当時のCD機はオフライン型、頑丈な鉄製のボックスで、カードが差し込まれ、暗証番号が打ち込まれると、ボックス内で両者が照合される仕組みとなっており、よく冗談半分に「箱の中に行員が座っている」と噂されたものです。

ちなみに、磁気テープが初めてカードに組み込まれたのが69年であり、その規格を定めた「銀行統一仕様」が制定されたのが72年でした。CDを母体行のコンピュータに接続する、いわゆるオンライン化は71年から始まり、その機能に預入や送金が加えられるようになりました。すなわち、ATMの出現です。CD導入当時、消費者は、キャッシュカードを発行した銀行の店舗以外に設置されたCDを利用することはできませんでした。このような制約はいかにも不便という声が高まったのは当然で、この時代的要請を背景として、ATMの共同利用がまず同一業態内で、ついで異業態間、さらには銀行界と他業種企業間で順次実現していきました。

異業態間のATMの接続は、仕様、設置台数、手数料体系などが異なるので実現は容易なことではありませんでした。しかし、これもやがて克服され、75年11月に、日本キャッシュサービス船(NCS、都市銀行13行、地方銀行23行、相互銀行18行が共同参加)が設立され、大都市の主用駅構内や百貨店にCDが展開されました。これは業態間の高い壁を越えたCD提携の草分けともいえる存在でしたが、96年にその使命を終えたとして解散されました。また、異業態間のATM提携では、銀行界と郵政省の確執も見られたが、これも氷解し、99年1月から、建設的な方向で提携が進んでいます。

銀行と他業種企業間のATM提携にもいろいろな問題が横たわっているようですが、時代のニーズを背景とし、時の流れとともに新たな門出が開かれているようにうかがわれます。

以下、同一業態内の提携の動きを表53に、異業態間の提携の動きを表54に、そして銀行界と他業種企業間の提携の動きを表55にそれぞれまとめておきます。

ATMの機能

ATMの機能は、メーカー(沖電気、富士通、オムロンなど)、型の新旧、設置場所と設置目的、ATMの所有者などによって異ります。磁気ストライプの読取機能も異ります。標準タイプのATMはクレジットカード会社のものでは、キャッシング、ローン、利用可能限度額の照会などの機能を備えています。銀行のATMは、預入れ、払戻し、残高照会、通帳記入、振込み、定期預金取引、ローンなどの機能を有しており、画面操作でクレジットカードに対応する機能を備えているのものです。

郵便局のATMもほぼ同様であるが、後述するように、海外クレジットカード会員のキャッシングに対応できる機能を備えている点に注目すべきです。これらの基本機能に加え、最近では次のような多彩な機能が追加されているのも出現しています。

  • 自動車免許証で銀行日座を開設
  • 携帯電話の指図に対応
  • インターネット通販の注文と決済
  • チケット予約と代金決済
  • 各種ローンや商品案内
  • クレジットカード申込み
  • 公共料金払込
  • 住宅ローンのシミュレーション
  • 宝くじ販売
  • デビットカード対応、クレジットカードリボ繰上返済機能対応
  • 電子マネーの取扱い
  • 強盗対策機能

最後の強盗対策機能はとくに興味深いです。ATMを破壊して現金を盗もうとすると、センサーがその攻撃を感知し、カッターが紙幣に切り込みを入れる工夫があるようです。無人店舗の展開が増えるとともに、機能の多様化はとどまるところを知らりません。

なお、現在急ピッチで磁気ストライプカードのICカード化が進められています。これに伴い、カードインフラのICカード対応化も当然のことながら進行中であり、ATMもその過程にあることは言うまでもありません。

ATMと暗号

ATMに打ち込まれた暗証番号およびカードデータは母体行(イシュアー)に送り込まれるが、その途中で盗知(盗聴、タッピングともいう)されるのを防ぐ工夫が要ります。これがいわゆる暗号化の問題です。

次で述べるグローバルATMにはすべてDESと称する暗号が施されています。国内のATMの暗号化はどこまで進んでいるか詳らかでないが、これも相当に進んでいると願いたいところです。

ATMの仕様

ATMのサイズは機能や目的によって異なるが、一般的には奥行き60センチ、幅90センチ、高さ140センチ前後で、強力なパワーシャベルによる場合は別として、粗暴犯による破壊行為にも耐えられるよう強固な金属ボディ構造を備えています。

外部構造

  • CRTディスプレー(タッチまたはキーボタン方式、音声や携帯電話による指示に従うものもある)
  • 紙幣(硬貨)取り出し・投入口
  • カード挿入口
  • 明細書差出口
  • 監視カメラ
  • 係員操作パネル
  • 施錠口
  • 電源スイッチなど

内部構造

  • 制御ボックス、ATMの心臓部で、CPU2個以上を内包。ROM、RAM、ICロジックなどプログラム多数を内包
  • 通貨識別機、識別センサー、特殊インク、サイズ、色、すかし、模様などを光学的に読取る装置など
  • 現金収納ボックス、強化プラスチック製、通貨識別機と紙幣・コイン取り出し・投入口をゴムベルトで連結
  • カードリーダー、JIS Ⅰ・Ⅱ型対応、ICカード対応もある、回収トレー
  • 印字機、明細票、記録表作成、ジャーナル巻取リスプール。その他、回線保護、暗号装置など

グローバルATM

グローバルATMとは、国際ブランドのカードを使い、どこの国においても現地通貨でキャッシングできるATMをいう。VISAのプラス、MasterCardのシーラスが代表的なものだ。世界規模の展開台数は現時点で次のとおりです。

  • VISA 75万台
  • マスターカード 78万台
  • アメックス 50万台以上
  • JCB 95万台
  • ダイナース 43万台

わが国では、2000年初めまでは、VISA系が約370台、MasterCard系が約300台でした。年間の来日外国人旅行者数450万人の規模から見ると、この台数はいかにも均衡を失しているとの批判が海外から寄せられていた。そこで郵政省は2000年2月、同年7月の沖縄サミットおよび2002年のサッカーワールドカップ大会に備え、全国に展開している郵貯ATM2万数千台を段階的にグローバルATMに切り替え、海外発行の国際ブランドクレジットカードが利用できるようにする旨を発表しました。

これまで、国際ブランドからの度重なる要請にもかかわらず、コスト、DES暗号化などの障害から遅々として進まなかった国内ATMの対外開放が一挙に進むこととなり、大きな朗報でした。

ところで、私にはグローバルATMには2つの思い出があります。88年の第24回ソウル・オリンピック大会で、VISAは公式スポンサーの一員として、オリンピック村に当時まだ珍しいグローバルATMを設置して、来韓外国人のキッシングに備えました。私もその一員として、3週間ほどオリンピック村に滞在したが、結果は、日本人利用者はわずか5人、他の外国人たちもATMを遠巻きにして敬遠し、その横に開設したマニュアルキャッシング窓口に長蛇の列ができる有様でした。まだATMに馴染みが薄い時代であったためでしょう。ATMがもてはやされる今日から振り返ってみると、まさに隔世の感を抑えることができません。

それから6年後の94年、私は第12回アジアスポーツ大会で、MasterCardの現地責任者として広島に滞在しました。ここでのATM利用は、ソウルオリンピックに較べるとかなり盛況でしたが、イラン人によるカード偽造事件とマレーシア人による外為法違反事件が発生し、いずれも未然に防ぐことはできたものの、冷や汗をかいたことを覚えています。

このほか、ATMのDES暗号化の手続の難しさや、京都におけるグローバルATMの配置台数の少なさに対する、ある海外要人の抗議など、懐かしい思い出となっています。本項の表48~55は以下の資料をもとに作成しました。

  • 石崎純夫著『エレクトロニック・バンキング』(金融財政事情研究会)
  • UCカード30年史および三井住友VISAカード会社案内
  • 日本経済新聞

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