ゆうちょ銀行発行カードとクレジットカード業界の提携の歴史

郵貯とクレジットカード業界の提携

富士銀クレジットが98年11月から、郵貯ジョイントカードの発行を開始しました。銀行系カード会社が郵貯と提携するのはこれが初めてです。99年1月に都銀2行を含む113の金融機関とノンバンクが郵貯ATMと接続を開始する。ほんの少し前まで、銀行業界が郵貯の肥大化を徹底して批判していたことを思うと、時代の移り変わりの速さに驚かされます。

郵貯とカード業界の融和

日本の個人金融資産は、2002年3月末現在で、総額1417兆円に達しました。うち、19%弱の262兆円が郵便貯金(通常、定額および郵便振替各国座の合計)です(日銀広報課、速報値)。

郵貯カード普及協会の資料によると、全国に展開されている郵便局の数は2002年11月末現在、約2万5000に及びます。総務省郵政事業庁によると、郵貯口座総数は約1億(このうち、いわゆるスリーピングロ座は2割前後か)。口座総数に対し、約8500万枚のキャッシュカードが発行されています。

民間金融界にとって、このように巨大な勢力を擁する郵貯はこれまで、大きな脅威でありました。このため、銀行側は、長年にわたって「郵貯肥大化反対」「官による民業圧迫阻止」を主張しつづけてきたことは周知のとおりです。銀行系カード会社が母体行の方針に従って、反郵貯の姿勢をとり続けてきたのも当然の成り行きでありました。

もっとも、銀行系カード会社以外のクレジットカード会社は、郵貯と早くから協力関係を結んでいるところもありました。1984年には、日本信販が「日本信販・郵貯ジョイントカード」の発行を開始しました。民間企業で郵貯との提携カードを発行するのはこれが初めてでありました。そして、このカードに、87年、VISAブランドが付与されましました。

ですが、郵貯ジョイントカードにブランドを与えたVISAインターナショナル東京事務所には、銀行系カード業界からの熾烈な風当たりが待っていた。カードには、BINと呼ばれる4桁の背番号が付されています。カード番号の最初の4桁です。

売上伝票の処理にあたっては、そのカードのBINが、カード会社間の資金清算決済システムのコンピュータに登録されていることが必要です。ところが、当時このシステムを担当していたビザ・ジャパン協会は、VISA日本信販・郵貯ジョイントカードのBINをシステムに登録してくれませんでした。清算システムからはじき出された売上伝票はすべてVISAインターの事務所に送り込まれ、そこで手作業で計算、処理される破目となりました。1件ごとに加盟店手数料を算出しなければならない、この前近代的な処理は、当時VISAに勤務していた筆者にとって、ほろ苦い思い出となっています。

それから18年の歳月が経過した今日、ジョイントカードやATMネットワークなどの分野で、郵貯と民間金融機関とはさまざまな協力関係を構築しています。まさに、「昨日の敵は今日の友」であり、隔世の感を禁じえない。こうした状況の変化の背景には、次のような事由があるといわれています。

  • 郵貯のあり方をめぐる行政改革論議に一応の見極めがついてきたこと。
  • 金融規制緩和とバブル崩壊により銀行の財務基盤が揺らいだこと。
  • 新外為法の施行や金融規制緩和による金融界の再編を見越し、外資系金融機関が、日本の膨大な個人資産を狙って大挙進出する動きを示し、邦銀側も対抗策を招ずる必要に追られたこと。

金融業会の地殻変動が加速するとともに、不況が長引く状況の下、銀行系カード業界にも、「巨大な郵貯資産と手を握らないと、消費者へのサービス競争に後れをとる」との懸念が強まってきたと見るべきでしょうか。消費者の立場から見ると、この動きは歓迎すべきものでしょう。

郵貯ジョイントカード

郵便貯金カード普及協会の資料によると、郵貯ジョイントカードは、2001年2月現在、180種類、500万枚超が発行されている由です。このジョイントカードは、郵貯キャッシュカードとクレジットカード会社の発行するクレジットカードを1枚のカードに合体したものです。1枚で、郵貯の引出しとクレジットカードの機能とを併せ持っているのが特徴です。しかも、この郵貯キャッシング機能には特筆すべきことであるが偽造カード保険が付されています。このカードにVISA、マスターカード、JCBなどの国際ブランドが付されれば、海外でも利用可能となります。

ジョイントカードの1つの類型として最近生まれたのが、citi bankのキャッシュカードと郵貯カードが合体した「郵貯ワールドキャッシュカード」です。このカードは、都銀、地銀、郵貯ネットワークATM約100万台と、海外のciti bankやCIRRUS系のグローバルATM78万台を利用することができます。さらに、デビットカードとしても、MasterCard系の「マエストロ」の加盟店でショッピングが可能です。

このほか、地方自治体との提携により、郵貯キャッシュカードに行政サービス機能を付加したカードも発行されています。

郵貯ジョイントカードの取扱いを認める法的根拠は、郵便貯金規則52条の3の2です。ただし、これは、カードによる郵貯機械払い(CD/ATMキャッシング)を定めた規定で、ショッピングについては規定はありません。

郵貯ジョイントカードでは、ショッピング代金の決済も郵貯口座で行うと定められています。ですが、郵貯関連法規にカードショッピングに関する規定がないことからもわかるように、クレジットカード取引にかかわる一切の事項(年会費や手数料の徴収、取引データの処理、債権の回収など)は、すべて提携先のカード会社に任せる、というのが郵貯側のスタンスです。したがって、「カードの提携でお互いに世話になるから、手数料を分配しましょう」、すなわち、クレジットカードの世界における、いわゆるインターチェンジ・リインバースメント・フィーの発想もこのカードには無縁のようです。

なお、暗証番号の守秘義務違反による不正キャッシングについては、郵貯は利用者に対し、極めて厳しい態度で臨んでいる(正当の払渡し、郵貯法26条)ことについては前述しました。カード会社がケースバイケースで、弾力的に処理するのに比べ、情状酌量の余地なしという意味で、きわめてはっきりしています。

ジョイントカードの中で、最近とくに注目されるのは、郵貯とクレディセゾンとの提携カード「郵貯カード・セゾン」です。現在の発行枚数は、全ジョイントカードの約51%を占めています。前述したように、ジョイントカードの先鞭を付けたのは、日本信販・郵貯ジョイントカードでしたが、いまやその使命が郵貯カード・セゾンへバトンタッチされたように窺われます。

CD/ATMオンライン提携

2001年末現在の郵貯ATM台数は25,736台(郵貯カード普及協会調べ)、これとオンライン提携を希望している金融機関数は約120社に上っている(平成10年金融情報システム白書)。郵貯ATMへの関心の高まりを如実に示す数字です。

その他

偽造保険の付保

2000年5月、郵貯は、郵貯キャッシュカードに偽造保険を付保しました。全国に先駆けるものとして注目されています。

大宮ICカード実験

日本郵政グループは、84年10月、東京で開かれた世界貯蓄銀行会議で、ICチップを搭載した「郵貯国際共通カード」構想を打ち出し、フランス郵電省、オランダ日本郵政グループなどの賛同を得ました。その後、同省は85年4月、「ICカード研究会」を発足させ、ICカードの実用化に向けた検討を開始しました。

98年2月から埼玉。大宮市で開始された郵貯ICカード実験(いわゆる「電子財布」実験)もその延長線上の1つと位置付けられる。JCB、富士銀クレジット、日本信販、セントラルファイナンス、流通系カード大手4社も参加、さらにVISAインターとMasterCardインター、あさひ銀行、埼玉県信用金庫も、オブザーバーとして参加しました。本実験は2002年3月に完了し、その後、本格的稼働段階に入っています。

デビットカードの商用化

デビットカードは「金融機関の預金口座に直接アクセスできるカード」です。銀行のキャッシュカードにショッピング機能を付与したものだ。ショッピング時点もしくはその2~3日後に代金が利用者の預金口座から引き落とされる仕組みです。

ところが、このデビットカードの普及は、当時の大蔵省機械化通達による厳しい規制を受け、あまり広がらず、むしろ息切れ(死に体といったほうが適切か)状態に陥っていた。

97年7月、この通達は廃止されました。これに伴いデビットカード普及の動きも息を吹き返し、98年6月に富士銀行と日本郵政グループとが旗振り役となって、「日本デビットカード推進協議会」が発足しました。同協議会には、同年11月現在、金融機関915行庫、一般企業124社が参加しています。

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