海外でクレジットカードを利用した場合の円換算方法とは?

海外でのカード取引代金の円換算方法

日本国外のなどで外国通貨建てで購入した代金は、日本円に換算する場合があります。海外での利用時に、現地通貨以外(日本円建てなど)でのお支払いを選択した場合は、現地の加盟店独自の換算レートが適用されます。

海外でクレジットカードを利用した際、支払金額は必ずしもご利用日の換算レートではありませんのでご注意を。

為替換算レートへの疑問

まず、海外で行われた外貨建てのカード取引代金を自国通貨の円に換算するときに使われる「インターバンク・ビット・レート」を理解することから始めよう。インターバンク・ビット。レートとは、為替市場における銀行間の為替売買取引に使われる相場の買い値(bit rate)を指す。これに対し、売値はasked rateと呼ばれる。両者は通常、次の形で示される。

US$SPOT(翌日渡し)¥112.10~ 20(112.10で買い。112.20で売り)このレートが、特定銀行1行の建値か、特定銀行数行の建値の平均か、またオープンニングレートかクロージングレートかについては、世界共通の定義があるわけではない。

ところで、イシュアーX社が発行したクレジットカードを持つY氏は、1985年10月にバングラデシュに出張し、ダッカのホテルに投宿し、数日後に帰国した。Y氏は後日、X社から送られてきたカード利用明細書に記入されたホテル代金の円建て請求額を見て、円換算について疑問を抱き、X社に問い合わせた。旅慣れたY氏は、海外のホテルをチェックアウトするときは、ホテル宿泊代金が円でいくらになるかを胸算用するために、キャッシャーのフロントに掲示されている、その日の現地通貨の米ドル相場を必ずメモすることにしています。その日のホテル代金は10,000Taka(現地通貨)、Takaの米ドル相場は1ドル=50Takaですので、ドル建てのホテル代金は200ドルでした。

しかし、帰国後請求されたホテル代金は、そのときの東京市場ドル相場、1ドル=110円で換算すると22,000円ですべきところ、25,300円と15%割高となっていました(以上の数字はすべて理解を容易にするための架空の数字です)。

海外でカードを利用した人々の中には、この種の疑問を感じた人が少なくないと思われます。この疑問を解く補助とするため、国際ブランドカードを海外で使った場合、外貨建て取引代金は、どのようにして円に換算され、会員に請求されるのか、また、その換算プロセスの中にどんな問題があるのかを、VISAが「多通貨決済制度」を実施した1986年6月を境として、その前後の外貨決済の状況について考察してみましょう。

外貨建て取引金額の円換算

話をダッカのホテル代金に戻しましょう。円貨請求までのプロセスを順を追って見てみましょう。…話が少々ややこしくなります。

ダッカのホテル(VISA加盟店)は、売上伝票(Taka建て)を香港のアクワイアラー(香港上海銀行とします。バングラデシュのような遠隔の地にある店は通常、香港の銀行が加盟店契約を結んでいるケースが多い)に送付する(両者間はコンピュータ接続がまだないので、データは空送される。約1週間かかるとする)。ホンシャン(香港上海銀行)は、同行とVISA処理センターとを結ぶコンピュータ回線(VISA NET)を通じて、このデータをVISAへ送り込むために、VISAからあらかじめ与えられていた「VISAソフトプログラム」にこのデータを入力します。この段階で、ホンシャンは、Taka建てのホテル代金を米ドルに換算します。その際に用いられる為替レートは、ダッカのホテルの取引日以降ホンシャンによる処理日までの約1週間における、ある日の自行に最も有利なインターバンクビットレートです。

VISA処理センターは、香港から送られてきた米ドル建てのデータを受けると、「為替相場ファイル」から、ホンシャンが使用したレートがクオートされた日と同一日のTakaの対米ドル相場を引き出して、これをホンシャンが使用した相場と比較して、間違った相場が使われていないかどうかチェックします。

次に、VISA処理センターは、データをイシュアー別に仕分けし、各イシュアーにこれを電送します。その際、処理センターは上述した「為替相場ファイル」から抜き出したTakaの対米ドル相場を「参考レート」として、併せて送り込みます。

このデータを受けた日本のイシュアー(X社)は、これを自行のコンピュータで再処理し、カード会員に対し、代金請求のための利用明細書を送付します。この際、ドル建て金額を円に換算するレートは、自国市場の相場(あるいは上記の「参考レート」)を使用しますが、これに一定の手数料を上乗せすることが認められています(イシュアーは、会員に代わってVISAとの間で、ひとまず代金の決済を行うので、カード会員から代金を回収するまでの間、立て替えた資金の金利相当分を手数料としていただく、という理屈です)。

米ドルを基軸通貨とする決済上の問題点

以上の説明でおわかりのように、現地通貨の自国通貨への換算には必ず、米ドルが基軸通貨として利用されています。そこに内包される問題点は、以下の4つです。

基軸通貨・決済通貨としての米ドル

現在の変動相場制の下では、各国通貨の対米ドル相場がなんらかの理由で、急激かつ大幅に動くことは周知の事実です。たとえば、シンガポールドルとタイのバーツとの間の相場は現在、比較的安定しているとしても、両通貨の間に一度ドルが介在すると、両通貨の開きは大きくなる可能性が高いです。

対ドル換算レートの選択

現地通貨の対ドル換算レートは、インターバンク。ビット・レートとすることについては前述したとおりです。ただ、このレートにはさまざまなものがあり、とても1つに絞り込むことは困難です。

取引日とアクワイアラーの処理日との間隔

アクワイアラーは、この間において自行に有利な日のレートを自由に選択できます。この間隔が長くなればなるほど(VISAの経験によれば、短くて7日、長いときは半月程度)、イシュアー(およびカード会員)は相場変動のリスクに晒(さら)される危険が大きくなります。

VISAのレートチェック能力

VISAは、メンバーの適用した換算レートの是非をチェックする体制を整えていますが、全世界で時時刻刻変動する200種類の相場を迅速・的確に追跡把握することは極めて困難です。

VISAの「多通貨決済制度」の発足

VISAは、以上にご紹介したようないろいろな問題点を踏まえたうえで、それまでの決済システムを抜本的に改善するため、86年6月、「多通貨決済制度」の構想を明らかにした(87年4月スタート)。同制度の骨子は以下のとおりです。

大前提

外貨建てのカード取引の決済においては、VISAが中心的な役割を果たし、メンバー通貨の相場を、VISAのコンピュータセンターで集中管理し、多通貨の交換決済を一手に引き受けて行います。

基本的条件

新システムは、カード会員、イシュアー、アクワイアラーなどのVISAの当事者がそれぞれ必要とする次の条件を、すべて最大限に満足させるものでなければなりません。

カード会員側の条件
海外での買物代金の支払いにつき、合理的な期間内に、納得のいく相場に基づいた請求を受けること。
イシュアー側の条件
  • カード会員からの安全、迅速、確実な立て替え払い資金回収方法の確立。
  • 為替リスクの回避。
  • VISAに対する決済用資金の迅速、確実な提供方法の確立。
アクワイアラー側の条件
  • 加盟店への円滑な資金供給を行うための資金調達ルートの確立。
  • 為替リスクの回避。やむを得ない場合のリスク補償。
VISA側の条件
  • メンバーに対する弾力的、競争的なサービスの提供。
  • 為替リスクの回避。
  • メンバー間の決済資金の効率的運用方法の確立。
  • 新システム開発0運営コストの迅速な回収と新サービス提供に見合う手数料の確保。

多通貨決済制度の概要

新制度の主な内容は以下のとおりです。

  • アクワイアラーは、VISAに対し、外国のカード会員が自国で行った取引にかかわる自国通貨建て金額をそのまま送り込みます。
  • VISAは、アクワイアラーから送り込まれた現地通貨建て金額をVISAが登録管理する200種類の指定通貨(当初は20種類でスタート)について換算日前日に指定決済銀行(後述)から受けたインターバンク・ビット・レートにより米ドルに換算し、各メンバーの当日のポジションを計算確定します。この200種類の通貨は、すべての国際取引の99.9%をカバーするといわれています。
  • VISAは、指定決済銀行(後述)から仮の為替レートの提供を受け、各通貨ごとの決済に必要な資金につき、指定決済銀行との間で仮の売買コントラクトを締結します。
  • VISAは、その後、指定決済銀行から確定レートのオファーを受け、これに基づいて最終的なネット・ポジションをメンバー別につくり、同行との間の売買コントラクトを確定します。
  • VISAは、メンバーに対し、確定レートで計算した当該国通貨建ての取引データを送付します。
  • メンバーは、VISAからの指図に従って、その2日後に自国通貨で決済を行います。同時にVISAも指定決済銀行との間で、売買コントラクトの実行を行います。各メンバーは、自国内のVISA指定銀行(発足当初は住友銀行、現在はCMB東京支店)に自国通貨建て勘定を開設し、これを通じて前述した決済を行う(これまでは、メンバーは在米銀行<自行支店またはコルレス先銀行>にドル勘定を開設し、VISAとの間で決済を行っていました)。

指定決済銀行

VISAは、多通貨建ての国際取引を一元的に決済するため、特定の銀行を指定し(実際には、バークレーズバンクPLC、ロンドンが指定された)、同行が手形交換所的な機能を果たすこととなりまし。この銀行の要件は次のとおりです。

  • 為替管理などの制約を受けていないこと。
  • 20種類(現在は200種類)の指定通貨の市場レートを、常時オファーできる体制を整えていること。
  • 20種類(現在は200種類)の指定通貨の売買を支障なく実行できること。
  • 世界中に散在するVISAのメンバー銀行およびその海外支店もしくは海外コルレス先銀行との間で、支障なくかつ迅速に取引ができること。
  • 行内のバックオフィスのエレクトロニクス化された事務体制が完備していること。

国際ブランドカード5社の換算レートと手数料

なお、参考までに、現在国産ブランド5社が使用している換算レートとそれに上乗せする手数料を下の表に示しておきましょう。

国際ブランド別の換算レートと手数料

VISA
換算日前日、ロンドンのバークレーズバンクがオファーするopening rateの仲値 プラス1.60~ 1.63%
MasterCard
換算日前日、ブラッセルの モントリオール銀行がオファーするclosing rateの仲値 プラス1.0~ 1.6%
JCB
換算日、東京の三和(UFJ)銀行がオファーするTTS opening rateの仲値プラス1円
AMEX
ニューヨークまたはロンドン市場相場の仲値 プラス1%(詳細不明)
Diners Club
換算日、東京、富士(みずほ)銀行がオファーするTTS opening rateの仲値 プラス1円

資料:日経トレンディ1999年12月号、月刊消費者信用1986年10月号

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