加盟店とクレジットカード利用代金の回収のしくみ

クレジットカード利用代金の回収

クレジットカード代金の銀行引き落としとは、指定日(カード支払日)に自動的に利用した金額が銀行口座から差し引かれること。これはみなさんご存知ですよね。

しかしその銀行口座から引き落とされる順番まで考えたみたことがありますか?今回はそんなクレジットカード代金回収に関するお話です。

代金回収の流れ

カード利用代金の決済は、日本では原則として、会員が指定した銀行または郵便局の預貯金口座からの自動引落しによります。このほか、持参払い、送金、振込みなどによる場合もあります。アメリカでは、主として小切手で支払われます。

カード利用代金が回収されるまでの流れを示すと次のとおりとなっています(期日は便宜上、仮定とする)。

  • 加盟店から売上伝票を回収(締め切り4・10、アクワイアラー)
  • l力月間(3・11~4・10)のカード利用代金の明細確定(イシュアー)
  • カード会員に利用代金請求書を発送(4・25)
  • 金融機関に日座自動引落依頼書を発送(4・25)
  • 会員指定回座からの引落し、カード会社名義の口座へ振り込み(5・10)

(以上、正常債権の決済)

  • 金融機関から引落不能通知を受領(5・20)
  • 電話、郵便、訪間による請求開始(5・20以降)
  • 信用情報機関への事故情報登録(6・10)
  • 法的回収手続開始(1~2カ月後)

(以上、ここまで不払い債権の管理・回収)

  • 未収代金の貸倒れ損金処理

カード会社や通販業者などの消費者に対する与信額は、比較的小口であるので、債権回収には非常に手間とコストがかかります。利用代金の大半(97%前後)は期日に決済されるので、多少の不払いは売上増加でカバーしたいという姿勢があったことも事実でした。しかし、バブル崩壊後はこの考え方は通用しなくなりました。

当然の帰結として、カード会社は不払債権の回収に力を入れるようになってきています。しかし、採算面ではなかなかペイしない。司法手続は小口債権の回収には不向きで、裁判に訴えても費用倒れになることが多いといわれています。反社会グループが関与していると、回収はますます困難となります。

この解決策として、1998年10月、「債権管理回収業に関する特別措置法(通称サービサー法)」が成立しました。同法においてクレジットカード会社が果たせる役割は2つあるといわれています。

1つ目は、カード会社などの法人が債権回収に関するノウハウを活用して、回収業務を行うことです。たとえば、いコンシュマー・クレジット・クリアランス(CCC)は、クレジット債権などの事故情報を登録・管理するデータバンク会社ですが、サービサーとして回収業務も行っています。

2つ目は、与信業者を組合員とする民法上の任意組合として、構成員が共同して回収に当たるものです。この場合、データの持ち寄り、専任者の配置、費用分担などの問題があるが、今後大いに活用されるのではないでしょうか。

自動振替決済制度

自動振替とは、支払人(預金者)と受取人があらかじめ契約を結び、支払人の口座から、受取人の回座への資金振替を銀行に委託する制度です。受託銀行では、所定日に支払人の指定回座から資金を引き落とし、受取人の回座へ振り込みます。預金口座振替制度ともいいます。

同制度は1955年、電話料金の支払から始まりました。その後、NHK受信料(63年6月)、水道料金(66年8月)、電気料金(67年7月)、ガス料金(68年2月)へと広がり、現在は家賃、会費、授業料、手数料、ローン定期返済など、定期的な支払いをカバーし、国民生活に定着しています。銀行への信頼に基礎を置く、世界にあまり類例を見ない、日本の誇るべき制度です。

クレジットカード業界でこの制度を最初に利用したのは、日本ダイナースクラブでした。同社は60年、カード会員に対し、母体行である富士銀行に会員名義の「ダイナース預金口座」(10万円)を開設するよう依頼、カード利用代金を同口座から引き落とすこととし、62年1月に、この制度に正式に移行しました。これを機に、他のカード会社も同制度を採用し、その後急速にカード代金の自動振替契約が広がっていきました。

ただし、自動振替も決して万能とはいえません。カード取引が複雑化すると、定期、定額返済を柱とするこの制度に馴染まない取引が出てくるようになりました。リボ払いの任意返済(ミニマムペイメント十a)やJCBが01年9月に発行したArubara(ある時払い)カードがその好例です。この場合、会員は原則として、カード会社に条件変更を申し込み、手数料を払ったうえで返済金を払い込むこととなります。しかし、この問題もATMの多機能化が進み、徐々に解決されつつあります。

ところで、受託銀行は指定された振替日に引落しができなかったカード代金については、後日まとめてカード会社に通知します。カード会社は、その通知を受けた日から、延滞債権の管理を始めます。延滞債権の発生率は業態によって異なりますが、好景気のときは0.3%前後、不況時には2%程度に達するといわれています。

不良債権

回収不能となった債権には、「貸倒れ債権」「焦付き債権」「延滞債権」「問題債権」など、いろいろな呼び名がつけられる。これらをまとめて「不良債権」ということもありますが、延滞の程度(期間)に応じて呼び方が変わると理解すればよいでしょう。銀行業界では、債権を、

  1. 第1分類(回収に問題ないもの)
  2. 第2分類(個別に適当なリスク管理が必要なもの)
  3. 第3分類(損失発生の可能性が大きいが、合理的に損失を見積もることが困難なもの)
  4. 第4分類(回収不能、無価値なもの)

と4つに分類し、②から④ までを「問題債権」と称しています。「返済が3カ月以上6カ月未満遅れているもの」や「金利を一定基準で減免しているもの」も、この問題債権に含まれます。

クレジットカード業界では、一部でこの銀行区分を用いていますが、表現方法は別として、おおむね決済日以降2~3カ月経過した未収債権を「準管理債権」とし、その後、時の経過に従って、3カ月以上1年未満返済が遅れているものを「延滞管理債権」、さらに1年以上経過したものを「不良債権」(償却対象)としているようです。

なお、「底溜り債権」という呼び方がありますが、これは「準管理債権」に属し、管理を怠ると返済が滞りがちとなる債権を指しています。ビヘイビア調査などによる顧客管理がしっかりしていると、これらの債権の相当部分は活性化するといわれています。

延滞管理債権

延滞債権比率(金額または件数)の計算方式は通常、次のとおりです。

  • (期中の3カ月以上延滞債権額または件数)を分子とし、(期首十期末の債権残高または件数の合計を2で割ったもの)を分母とし、その答えに100を掛けた数値

この計算式で留意すべき点は、以下の3つです。

  • 件数比率<金額比率の場合は要注意です。この場合、金融の鉄則であるリスク分散の原則に反し、融資が少数の債務者に集中していることを示す
  • 金額(件数)比率が小さいほど業績は健全であり、逆に6~7%に達すると企業は「死に体」になるといわれている
  • この計算式は、分子が貸倒れ損失の可能性を隠し気味になり、一方、業績好調で債権残高が伸びている時期には、分母が大きくなり、深刻な実態が見落とされがちとなる

延滞債権の回収は、次の5段階で行われる。時間の経過とともに請求の度合いが強くなる仕組です。

  1. 電話による請求
  2. 文書による催促
  3. 文書による法的手続の開始予告と督促
  4. 訪間取立
  5. 信用情報機関への事故登録

一昔前までは、回収は営業部門1対回収部門7~8名の人海戦術で行われていましたが、現在では顧客に対して延滞発生を自動的に電話で催促するオートコールシステム、機械的な催告期日管理など、大幅にコンピュータ化が進んでいます。

周知のとおり、悪質な取立行為は、貸金業規制法21条1項並びに大蔵省銀行局長および通産省産業政策局長通達により、禁止されています。しかし、銀行(カードローン等)の取立は、同法の適用外となっており(第2条)、その是非が一部で問題視されています。

法的手段による回収

回収手順

法的手段による回収には以下の6段階があり、弁護士、裁判所、執行官らが関与する。詳細は省きますが、抗弁権の接続、代位弁済の請求、債権の売却および不良債権の処理方法の4点について、簡単に説明しておきましょう。

  1. 内容証明による催告の送達
  2. 公正証書の作成
  3. 支払命令
  4. 和解・調停
  5. 仮差押え
  6. 訴訟

抗弁権の接続

消費者は、クレジットカードで購入した商品に瑕疵があった場合、販売店に対する代金の支払いを拒絶する権利(抗弁権)が認められています。

クレジットカード会社は、販売店に売上代金を立替払いし、消費者に対する代金取立ての権利(債権)を取得します。これにより、瑕疵(かし)がある商品を販売した責任はカード会社に受け継がれ、したがって、消費者はカード会社に対しても、代金の支払いを拒絶することができるのです。これを「抗弁権の接続」といいます(割賦販売法30条の4)。

代位弁済の請求

通常、クレジットカード会社は自らのカード債権について、第二者(保証会社など)にその保証を求めることはしません。しかし、銀行、保険会社、住宅ローン会社、流通系のハウスカード会社などでは、その債権について、クレジットカード会社と保証契約を締結するケースが多いようです。

カード会社がこの契約により、代位弁済を行った場合、カード会社は、債務者に代わって債権者に対し弁済を行った対価として、債務者に対し求償権を取得するわけです。これを「代位弁済の請求」といいます(民法474条以下で規定)。

償権売却

従来、日本では、弁護士以外の第二者が債権回収に当たることは禁止されていましたが、1998年10月に「債権管理回収業に関する特別措置法」(通称サービサー法)が成立し、クレジットカード会社は、そのカード債権(ただし、キャッシングによるものを除く)を債権回収業者に売却できるようになりました(同法2条2項および施行令1条3~ 4項)。

同法施行後、2003年1月までに約71社がサービサーとして営業を開始しています。なお、この「債権買取行為」は、信販会社が行う「立替払い行為」とは異っています。

立替払いは、信販会社が割賦販売契約に基づき、消費者に代わって販売店に商品代金を立替払いし、その後、消費者から代金を回収する行為です。前述の民法474条の第二者弁済に類似する行為です。

不良債権の処理方法

カード会社は、さまざまな回収手段を講じたうえで、なお回収不能な債権については不良債権として処理します。

不良債権の発生率は、業態別で若干の相違はあるものの、おおむね2~3%となっています。銀行系カード会社は96年以降公表を取りやめましたが、某大手カード会社によると、その発生率は流通系カード会社と同程度とのことです。

現時点において、この不良債権の処理方法は、次の4通りです。

貸倒れ償却(法人税法33条2項、法人税法基本通達9・6・2)

法人税法上、相当期間経過後の未収債権は、損金として経理し無税で償却できます。相当期間とは通常、回収期限到来後1年以上経過したものと解釈されていますが、所轄の税務署長が認めた場合、 1年あるいは6カ月未満でも可能なケースもあります。

長期分割払いの債権は、途中で未払いが発生しても回収期限到来後1年以上経過するまでは無税償却は認められません。なお、クレジットカード会社は当然、その経営判断により、有税で債権の全部または一部につき、貸倒れ償却をすることができます。

貸倒れ引当金積立(法人税法52条)

クレジットカード会社は、各決算期ごとに、次の①または②のいずれか有利な方法により、一定額まで無税で、期末の債権に対し、貸倒れ引当金を積み立てることができます。

  1. 法定繰入率(同法施行令97の1)
    • 銀行系 1000分の3
    • 信販系 1000分の13
    • 流通系 1000分の6
  2. 貸倒れ実績による繰入
    • 繰入限度額=A✕B
    • A=期末債権残高(簿価)
    • B=過去3カ月間の平均貸倒れ額を過去3年間の平均債権残高(簿価)で割った数値

前述のサービサー法により、クレジットカード会社は、そのカード債権の全部または一部(一括払い、分割払いを問いませんが、キャッシングによるものを除く)を、一定の債権回収業者へ売却することができます。

債権の証券化(特定債権等に係る事業の規制に関する法律2条2項、同法施行令1条3、4項、特定目的会社による特定資産の流動化に関する法律)

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998年10月、富士銀行は日本で初めて、カードローン債権(キャッシュカードによる当座貸越債権)を証券化し、これを内外の投資家に売却しました。

助日本資産流動化研究所の調べによると、信販会社および流通系クレジットカード会社でも、そのクレジットカード債権の証券化、流動化を行つているところがあるそうです。

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