クレジットカードを利用していないのに覚えのない取引が?

カードを利用した覚えのない取引

最近、カードを利用した覚えのない取引(以下、「覚えのない取引」という)について支払請求を受けたという苦情が多く寄せられていると聞きます。警察庁がまとめたハイテク犯罪相談件数は、1999年では2780件であったのが、2000年では1万1135件(うち、覚えのない取引396件)にはね上がりました。また、国民生活センターに寄せられたクレジットカード不当請求の相談件数も1998年中423件だったのが、2001年中724件に急増しました。

インターネット上の「覚えのない取引」といってすぐ思い出されるのは、「N-bill事件」ではないでしょうか。

アメリカ連邦取引委員会(FTC)が1999年初めに摘発した、悪質な代金請求代行業者によるオンライン小額決済詐欺事件です。クレジットカード番号を盗用したもので、被害は日本を含む20カ国、70万人に及び、被害総額が3750万ドルに達した事件です(FTC、NEWS RELEASE 2000・9・7)。

以下、この「覚えのない取引」をクレジットカードの立場からみて、その発生原因と対策等について考えてみましょう。

会員による「覚えのない取引」申立てのケース

カード会員が覚えのない取引と申し立ててくるケースは次の5つに大別できます。

本人に起因する場合

T&E(旅行。娯楽)分野で頻発する事が多いのがこのパターン。たとえば、以下のようなケースです。

  • チェックアウト直前にホテルのミニバーで一杯飲んだこと、あるいは電話をしたことを忘れていた。
  • ホテルの備品を知らないうちに壊した。
  • グループの代表として飲食代をカードで払った。
  • 予約をキャンセルするのを忘れた。
  • レンタカーを知らないうちに傷つけた、など。

本人が知らない場合

  • インターネット取引(特にアダルトサイト)では、摘発を逃れるため、サービスを提供する店と請求書を送り付ける店の名前がすり変わっていることが多い。
  • 家族が(本人に無断で)カードを使った、など。

第二者の不正行為による場合

  • 盗難・紛失カードを他人が悪用した。
  • 偽造カードが使われた。
  • 電話サービス(特にダイヤルQ2)で知らないうちに国際電話に切り替えられた。
  • 通販、ネット通販上の「なりすまし」など。

不良加盟店による場合

  • 二重請求。
  • 伝票の横流し。
  • POC(Point of Compromise、カード情報を横流しする不良名盟店)等からのカード情報持ち出し、など。

実際は関与しているが、知らぬ存ぜぬと白を切る場合

最も悪質です。ATMの分野でこの例が散見されます。

「覚えのない取引」を思い出してもらう方法

このような「覚えのない取引」は利用者にとっても非常にもやもやして不安になるかと思いますが、これを、会員に思い出してもらうよう努力するカード会社担当者のご苦労も大変なこととお察しします。

ある大手カード会社のベテラン担当者によると、苦情を申し立てる会員の態度と声音を見分ける技量がまず大切で、次々に手掛かりをフォローしていき、必要に応じて証拠書類の検索を織り込んでいくそうです。

以下にあげた手掛かりは、あくまで代表例です(これが全部ではありません)。

  • 加盟店の名前と場所
  • カード利用日
  • 商品名
  • 取引金額
  • 店員のカード取扱状況
  • カード利用日の会員の所在
  • 伝票の表示通貨
  • カードの保管状況
  • ATMの利用状況(場所、時刻、ATM識別番号など)
  • パソコン所持の有無
  • ホテルやレンタカーの予約の有無、ホテルのチェックアウト時の状況。
  • 過去数力月間のカード利用状況
  • オーソリゼーション・ログ(信用照会を実施した時の記録)
  • ATMジャーナル(ATMの作動記録や監査テープ

「覚えのない取引」への対応策

カード会社は、「覚えのない取引」と申し立てられた場合、どのように対応していくのでしょうか。この点について、カード会社はあまり手の内を示したがりません。悪質な会員に悪用されるのを防ぐ意味で、けだし当然のことです。しかし、6つの着地方法が推察できます。

  • カード会社は、原則としてあくまで会員に請求する
  • カード会社は、原則として請求を諦める
  • カード会社は、国際ブランドカード(VISAやMasterCardなど)の定めるチャージバックルールにより判断し、できるものはチャージバックに訴える
  • カード会社は、保険請求を行う
  • カード会社は、訴訟に訴える
  • カード会社は、社内で損失処理を行う。

「覚えのない取引」|こ対する心構え15箇条

以上、「覚えのない取引」をいくつかの切り口から考察しました。私にも経験がありますが、これに巻き込まれると極めて不愉快であり、かつ時間の浪費となります。あなたは先刻ご存知のことと思いますが、巷間伝えられる予防策を参考までに以下にまとめておきました。

ただし、ハリネズミのように身を守っても、やられるときはやられる。不気味としか言いようがない代物であることは間違いありませんが…。

  1. カード、暗証番号の管理に細心の注意を払う。
  2. インターネットのID、パスワードの管理に細心の注意を払う。
  3. 空巣、スリ、ブランコスリ、介抱スリ、車上荒らし、暴カバーに注意する。
  4. カード取引伝票、請求書、利用明細書などの整理保存に努める。
  5. パソコンログ、プロバイダー利用記録、電話通話記録などの整理保管に努める。
  6. インターネット取引では、相手側との話し合いの証拠をできるだけ集める。
  7. 海外通販、個人輸入の場合は言葉に注意、相手国の法律、商習慣に気をつける。
  8. インターネット上で、カード情報を無闇に流さない。
  9. 日頃から請求書の中身をこまめにチェックするよう心がける。
  10. 不審な請求を見たらすぐカード会社に連絡し、原因を徹底的に調べる。
  11. 支払いは納得がいくまで拒絶する。小額だからといって泣き寝入りしない。
  12. 場合によっては、カード会社と連絡のうえ、カードを廃棄処分にする。
  13. 場合によっては、国際電話サービスの中止を国際電話不取り扱いセンターに依頼する。
  14. 加盟店の店員のカード取り扱いマナーに注意を払う習慣をつけておく。
  15. カード会社との話し合いがこじれたら、以下の消費者相談窓口に話を持ち込む。
    警視庁総合相談センター
    03-3501-0110
    国民生活センター(消費者110番)
    03-3446-0999
    経済産業省消費者相談室
    03-3501-1511
    日本通信販売協会(通販110番)
    03-3434-0550
    日本消費者協会苦情相談窓口
    03-3553-8606
    総務省電気通信消費者相談センター
    03-3504-4177

少額であっても決して諦めないこと、泣き寝入りしないことが更なる被害の拡大を抑えます。もしもの場合は徹底的に解決に向けて努力して下さい。

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